産業競争力強化法案に対する附帯決議
政府は、本法案が成長戦略実行のための重要な対策であることに鑑み、その施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 産業競争力の強化は、民間の自発的な取組によって行われるべきものであり、政府の関与は最小限とし、あくまで民間の活力を支援するための環境整備にとどめること。また、企業収益の改善が雇用増大、賃金上昇及び消費拡大につながる好循環を安定的に生み出していくために、供給サイドだけでなく需要サイドも加味した施策を講じること。
二 企業実証特例制度において、事業所管大臣と規制所管大臣の協議が整わない場合、法律の趣旨に則り、内閣総理大臣が適切に調整を行うこと。
三 企業実証特例制度及びグレーゾーン解消制度の運用に当たっては、新たな規制の特例措置の求め及び規制の解釈及び適用の確認の求めについて、原則として一ヶ月以内に回答を行うこととし、この期間に回答できない場合には、一ヶ月毎にその旨及び理由を通知すること。また、新たな規制の特例措置の求め及び規制の解釈及び適用の確認の求めの件数については、四半期毎に公表すること。さらに、ユーザー企業の視点に立って、二つの制度が一体的に進められるよう配慮するとともに、早期にモデルケースを実現し、可能な限り情報公開を進めることを通じて、企業にとっての予見可能性を高めるよう努めること。
四 事業再編計画、特定事業再編計画及び中小企業承継事業再生計画について、計画に伴う失業の予防等雇用の安定に万全を期するため、計画の作成に当たり、事業者が労働組合等と協議により十分に話し合いを行い、また、計画の実施に際して、事業者が雇用の安定等に十分な配慮を行うことを確保することにより、労働者の雇用の安定に最大限の考慮を払いつつ当該計画が実施されるよう、厳に適切な運用を行うこと。
五 中小企業承継事業再生計画については、人員削減が主たる目的とならないこと、第二会社に移行する労働者の労働契約及び労働条件が不当に切り下げられないこと、また、第二会社に移行しない労働者がいる場合にはその選定が恣意的にならないよう、労働組合等と協議により十分に話し合いを行うことを要件として認定すること。
六 ベンチャー企業の支援について、従前の施策が必ずしも十分な成果を上げられなかったことに対する検証を行い、開・廃業率十パーセント台の目標達成に向けて、大企業と比べて十分な経営基盤を構築することができないベンチャー企業がその成長過程に応じた支援を受けられるよう、資金、経営ノウハウ、人材確保等、多方面に亘る支援の仕組みを構築するとともに、本法に基づく地域の創業支援に当たっては、十分な体制の整えられない市区町村に対し国として必要なサポートを行う等、実効的な創業支援体制の構築に万全を期すこと。なお、特定新事業開拓投資事業計画の認定の基準は、経済の実態に合わせ、可能な限り弾力的に設定、運用することにより、ベンチャーファンドへの投資を促進することができるよう積極的に取り組むこと。
七 大学のイノベーション機能の強化に当たっては、これまでの実態を踏まえつつ、資金供給の拡充に加え、経営や営業面での資質を有する経営人材の確保及びそれらを補う存在としての外部ネットワークの活用も含めた総合的な支援体制の整備に積極的に取り組むこと。また、大学等における研究開発の成果をうまく実用につなげていくため、研究開発所管官庁と産業所管官庁が協働して総合的な支援体制を構築すること。
八 中小企業の再生支援に当たっては、今後、事業再生を要する中小企業の増加が予想されることから、追加された仕組みを含め、関係者に広く周知するよう引き続き努力するとともに、再生支援の強化に寄与する専門人材の育成・確保に取り組むこと。
九 株式会社産業革新機構については、過去の類似施策の検証の上に立ちつつ、民間の目利き人材の十分な確保及びその積極的活用等を図り、出資対象の審査を継続的かつ厳格に実施する体制を整備するとともに、中長期の産業資本を提供することを通じて次世代産業の育成を図るというミッションの実現に向けた適切な運営に努めること。