産業技術力強化法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。
一 研究開発税制の戦略技術領域型の適用に係る手続については、事業者の円滑な活用や予見可能性の向上を図る観点から、過度に資料の提出等を求めることのないよう配慮するとともに、迅速かつ簡素なものとすること。あわせて、対象となる試験研究費の範囲や区分については研究及び開発の実態を踏まえて運用し、事業者に過度な負担とならないよう留意すること。その上で、本税制がこれまでに類のない高い控除率を措置するものであることを踏まえ、研究及び開発の進捗状況を適時適切に把握し、事業者が本税制の制度の趣旨に反して利益を得ることがないよう万全を期すとともに、事業者に過度の負担のない形でその適用状況及び成果を継続的に検証し、社会情勢の変化等を踏まえ、必要に応じ見直しを行うこと。
二 重点産業技術については、将来にわたって我が国の産業競争力や経済安全保障の強化が図られるよう、国際的なイノベーションの動向や経済社会情勢の変化を適切に分析し、必要に応じ、機動的かつ柔軟に見直すこと。
三 重点研究開発計画の認定制度については、我が国において重点的に推進すべき研究及び開発が的確に進められるよう、その推進に関する指針を可能な限り早期に策定し周知すること。また、中小企業による制度の活用が十分に図られるよう円滑な運用に努めること。特に先端的な技術領域において重要な役割を担いながら黒字化に至っていないスタートアップ等、税額控除の恩恵が届きにくい事業者についても重点産業技術の研究及び開発が促進されるよう、補助金・融資等の直接支援との組合せを含め、必要な措置を検討すること。
四 重点産業技術共同研究開発機関の認定については、教育・研究等の質において一定の水準を超えることを前提に、認定機関数の上限を定めず、幅広い機関を対象とし、大学等と、共同して研究及び開発を行う事業者の双方に対し、過度な負担とならない制度設計にするとともに、重点産業技術共同研究開発機関の教育・研究等の業務の円滑な実施に支障が生じることのないよう万全を期すこと。同時に、同機関については、今次の措置に加えて、その特性に応じた高度な経営を可能とするべく、制度環境の整備や支援措置の一層の充実を図ること。また、重点産業技術に関連する技術情報については、同機関が認定事業者と共同して又は委託を受けて行う研究及び開発において、適切に管理されるよう万全を期すこと。
五 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構及び国立研究開発法人科学技術振興機構が認定事業者等の依頼に応じて認定重点研究開発計画に従って行われる研究及び開発に必要な助言又は情報提供を行う際には、認定事業者等の株式取得等を通じてリスクの高い外国投資家に技術情報が流出することがないよう、認定事業者等の資本関係等について留意し、適切に行うこと。
六 日本版バイ・ドール制度の運用に当たっては、国際的な研究開発競争が激化していることを踏まえ、国内での活用状況を適切に把握するとともに、委託研究開発の成果として得られた特許権等について、受託者等による活用が最大限促進されるよう必要な取組を進めること。
七 本法に基づく各種措置の実施に当たっては、その成果が実証、事業化を経て社会実装へと円滑につながるよう、実証の段階における関係者の意見にも留意すること。あわせて、国際標準化の推進や知財戦略など、関係する施策を一体的に講ずること。その際、産学連携の促進に伴い共同研究成果の共有特許に係る第三者へのライセンスに共有者全員の同意を要する制約が社会実装を阻害する要因となっていることを踏まえ、共有特許の取扱いに関する指針の整備の検討を関係省庁と連携して進めること。また、知的財産のライセンスや標準化を担う専門的な人材の育成・確保に向けた取組を強化すること。
八 先端的な重要技術を巡っては、各国政府により企業の研究開発投資を呼び込む環境整備が進められるなど国際的な政策競争が激化していることに鑑み、我が国においても、研究開発投資環境について国際的なレベルプレイングフィールドを確保すること。とりわけ、研究開発税制については、諸外国における控除上限の柔軟化や繰越制度の長期化等の動向も踏まえ、我が国におけるこれらの在り方について不断の見直しを行うこと。
九 産業技術力の強化に当たっては、中長期的視点で我が国の科学技術力を向上させることが不可欠であるとの認識の下、事業者への税制優遇のみならず、短期的な産業分野への応用を前提としない基礎研究を含め、国の科学技術関係予算を抜本的に拡充する等の施策も一体的に推進すること。
十 重点産業技術のみならず、我が国が抱える社会課題、産業課題の解決を図ることにつながる分野に関し、国内の大学等の研究開発機関と事業者との共同研究が一層促進されるよう、総合的な施策を検討すること。同時に、各省連携の下、研究開発機関における高度人材の育成及び確保に向けた施策を強化すること。

