円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案に対する附帯決議
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。
一 本制度において、特に技術や人材の散逸を回避することや、従業員の協力の下で円滑に早期事業再生計画が実施されることが重要であることに鑑み、対象債権者や確認事業者の労使等となり得る関係者に対し、本制度の位置付け等について適切な情報提供を行うこと。
二 早期事業再生に向け、確認事業者が会社分割や事業譲渡等によってその従業員の雇用や労働条件の変更等を実施する可能性がある場合は、過半数労働組合等との協議を通じてその理解と協力を得るよう促すとともに、早期事業再生計画にそれら協議の状況を明記することとし、指定確認調査機関による調査の対象とするとともに、上記の趣旨を踏まえ、確認事業者が労働組合との協議のために情報提供を行う場合には、手続開始の公告をせず権利変更の対象を金融債務に限定することで事業価値の毀損の回避を図るという本制度の趣旨に鑑み、情報の秘密保持が適切になされるための必要な措置を、指定確認調査機関がその業務規程において定める事項とすること。
三 権利変更決議については、早期事業再生計画に基づく雇用や労働条件の変更等のほか確認事業者とその労働組合による労働協約等の変更等に法的な効力を及ぼすものでないことを明確にし、濫用的な取扱いがなされないよう必要な措置を講ずるとともに、認可後においても早期事業再生計画に基づく確認事業者の取組が従業員の協力の下で円滑に行われているかどうか等に留意し、必要に応じて適切に対応すること。
四 指定確認調査機関の指定をする際には、対象債権者の権利変更手続全体の円滑な実施、早期事業再生計画の適確な調査、確認調査員の適正な選任等を実施するために十分な能力を有しているかどうか、特に確認をすること。
五 確認調査員の選任については、そのプロセスの透明性を高めるとともに、多数決により金融債務の権利変更を行うことが可能になることを踏まえ、その選任要件は事業再生ADRにおける手続実施者に比較して、より厳格に定めること。また、確認調査員の見識を高め経験値を共有できるようにするため、研修の機会等の充実を図ること。
六 中小企業の事業再生支援については、物価高や人手不足等の厳しい経営環境の中でその必要性が高まっていることを踏まえ、中小企業活性化協議会や中小企業の事業再生等に関するガイドライン等を活用した既存の支援に当たり、関係機関の緊密な連携の下で事業者に寄り添った支援を一層充実させること。
七 本法の手続開始の要件が民事再生法等から緩和されていることを踏まえ、債務調整の必要性がない事業者が本制度を濫用することで債権者の利益が不当に害されることがないよう、指定確認調査機関が本制度の利用要件を確認する際に濫用を図る事業者を適切に排除するための運用における留意すべき点を整理し、広く周知・広報を行うこと。