自動車損害賠償保障法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。
一 財務大臣及び国土交通大臣は、財源の枯渇を招いた原因と現状を含め、自動車ユーザーの納得を得るべく説明責任を果たすとともに、被害者支援対策・事故防止対策の維持に責任を果たすこと。また、繰入金残額の約六千億円全額を被害者支援対策・事故防止対策が安定的・継続的に将来にわたって実施されるよう、令和三年十二月の新たな大臣間合意を最低限遵守し、一般会計から早期かつ着実に繰り戻す措置を講ずること。
二 新たな賦課金制度の導入に当たっては、被害者支援対策・事故防止対策に係る取組の現状及び課題について積極的に情報を発信し、その必要性について丁寧な説明を行うなど自動車ユーザーの理解が得られるよう努めること。また、その具体的な負担額の水準の決定に当たっては、一般会計からの繰戻し額を踏まえて、「今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会」において、中立的な第三者を交えた議論の結果を考慮して、自動車ユーザーの負担を極力抑えるよう努めること。
三 今後、追加・拡充される被害者支援対策・事故防止対策として実施すべき施策については、新たな賦課金を求めることとする以上、施策決定過程の「見える化」を行い、実施内容を精査すること。特に、各施策の費用対効果等に関する事前及び事後の検証については、使途を明らかにした上で、自動車事故被害者、その家族及び遺族団体その他関係団体などの意見を踏まえ、第三者による客観的な視点で、毎年実施すること。また、未成年者及び高齢者を対象とする事故防止対策を強化すること。
四 被害者支援対策については、自動車事故被害者、その家族及び遺族等が求める支援のニーズが、事故直後の専門的な治療・リハビリの機会の充実のみならず、介護者なき後の被害者の生活支援、高次脳機能障害への対応、就労支援、遺族の精神的ケアなど長期的なものに関しても高まっていることから、これらの充実を図ること。特に、希望した在宅重度後遺障害者が、グループホーム等障害者支援事業所への入所を含め、必要とする障害福祉サービスを円滑に受けられるよう、十分な体制を整備すること。また、短期入院・入所協力の充実を図ること。
五 被害者支援対策の実施に支障を来すことのないよう、療護施設等の老朽化対策、防災対策を促進するとともに、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策の充実・強化に努めること。
六 自動車の検査時期について使用者の認識を向上させるための措置等、無車検車、無保険車の排除のための適切な措置を早急に講ずること。
七 自動車事故対策勘定の積立金については、一定期間引き続き経常的な歳出の一部に充てることにより、自動車ユーザー負担の抑制を図ることとするが、将来的な自然災害などの非常時等に備えた臨時的な歳出の財源に充てるために必要な規模は常に確保すること。
八 自動車事故対策勘定における積立金の運用状況が大幅に改善される等の環境変化が生じた場合は、賦課金水準の引下げを図るなど、自動車ユーザーの負担軽減を行うこと。また、自動車安全特別会計の各勘定における剰余金の取扱いについては、今後、他会計への繰入れを行わないこと。
九 自動車ユーザーの負担による賦課金によって被害者保護増進等事業が行われることを踏まえて、独立行政法人自動車事故対策機構は、事業全般の精査・見直しを行い、機構の運営体制を効率的なものとし、管理業務の簡素化等を図ること。