高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議
障害をお持ちの方にとっても健常者にとっても誰にとっても暮らしやすいユニバーサル社会の実現を目指すには、今回の法改正に加え、幅広い施策を推進することが不可欠である。国会において、そのために必要な立法措置を引き続き講じていくよう努めるものとする。あわせて、政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。
一 本法に基づく施策はすべて、社会的障壁の除去及び共生社会の実現に向けて行われなければならず、また、すべての国民が障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの認識の下、社会的障壁の除去のために合理的な配慮を的確に行えるよう必要な環境の整備を進めること。
二 本法における障害者には、身体障害者のみならず知的障害者、精神障害者、発達障害者を含む心身の機能の障害があるすべての者が含まれることについて、改めて広く国民に周知するよう努めること。
三 高齢者、障害者等の移動に配慮し、交通結節点における移動の連続性を確保するため、関係者の連携が十分に図られるよう、必要な措置を講じること。
四 地方公共団体は地域の実情に応じて、二千平米未満の小規模店舗について、バリアフリー化の基準適合義務を条例により課すことが可能であることを踏まえ、その一層の促進を図るため、政府としても小規模店舗のバリアフリー化の実態把握に努めるとともに、ユニバーサルデザイン化に向けて所要の措置を講じること。
五 災害時の指定緊急避難場所等となる学校施設等については、近年、相次ぐ集中豪雨や台風に加え、南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模災害の予測を踏まえ、体育館だけではなく校舎も含めた一層のバリアフリー化に向けて、必要な措置を講じること。
六 共同住宅のバリアフリー化の一層の促進を図るため、地方公共団体が地域の実情に応じて共同住宅をバリアフリー化の基準適合義務の対象に条例により追加することが可能であることを踏まえ、その一層の促進を図るとともに、居住者のニーズに応じた選択が可能となるよう、共同住宅のバリアフリーに関する情報提供の取組を促進すること。
七 国際パラリンピック委員会によるバリアフリー対応の客室が不足しているとの指摘を踏まえ、選手や観光客等の受け皿となる宿泊施設のバリアフリー化の一層の促進を図るため、バリアフリー客室基準の見直しなど、必要な施策を講じること。
八 高齢者、障害者等の観光需要の高まりや、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え訪日外国人観光客の増加が見込まれることを踏まえ、バリアフリー化された空港アクセスバスの導入・普及に向けた支援措置を講じること。
九 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を踏まえ、競技会場において一定の車椅子用の座席の確保に努めるとともに、車椅子用の座席の配置に当たっては、サイトラインが確保できるよう、十分に検討すること。
十 駅のプラットホームにおける視覚障害者の転落を防止するため、ホームドア等の設置を一層推進すること。また、特に、地方における旅客施設のバリアフリー化が遅れていることから、全国的なバリアフリー水準の底上げに向けて必要な取組を行うこと。
十一 視覚障害者が安全に道路を移動することができるよう、音響式信号機の更なる設置の促進を図ること。また、聴覚障害者の歩行の安全を確保するため、緊急自動車が走行する際には、聴覚障害者の歩行の安全の確保に努めること。
十二 車椅子利用者が容易に単独乗降できるようプラットホームと車両の段差・隙間の数値基準を明確化することを検討すること。
十三 車椅子利用者の公共交通機関の予約時における利便性の向上を図るため、簡易な方法での予約を可能とするよう、
公共交通事業者等を適切に指導すること。
十四 新幹線等の鉄道車両において、車椅子のまま乗車することができるフリースペースの整備の一層の促進を図るため、鉄道事業者を適切に指導すること。