住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。
一 国の責任において国民の住まいが保障されるよう、地方公共団体も含めた住宅部局や福祉部局、住宅確保要配慮者に対して民間賃貸住宅への円滑な入居の支援や福祉サービスの提供を行う者等の関係者間の連携を強化しつつ、主体的に住宅確保要配慮者に対する居住支援の取組を進めるとともに、その充実が図られるよう、所要の措置を講ずること。
二 住宅確保要配慮者は住宅だけではなく複合的な課題を抱えている場合も多く、その居住支援に当たっては住宅と福祉の双方に関する知識が求められることから、居住支援に携わる者、特に、新たに居住支援に携わることとなる福祉関係の専門職種の者等に対する各種制度の周知を図ること。また、福祉関係の相談機関における研修の充実等が図られるようにすること。
三 住宅確保要配慮者のニーズに対応した賃貸住宅の供給や居住支援サービスの提供を図る観点から、ニーズや実態を十分かつ客観的に把握するとともに、その情報が賃貸住宅の賃貸人や住宅確保要配慮者の居住支援に携わる者等の間で適切に共有されるよう、所要の措置を講ずること。
四 低額所得者等にあっても本法に基づく制度が円滑に利用できるよう、利用者の経済的負担の軽減に資する家賃や家賃債務保証料の低廉化補助等について、支援措置の更なる拡充や運用の一層の柔軟化等、賃貸住宅の活用を推進するための措置を講ずるとともに、新たに関連することとなる福祉制度や地方公共団体の取組等が居住支援の現場において十分に活用されるようにするための所要の措置を講ずること。
五 居住安定援助計画の認定制度がいわゆる貧困ビジネスなどに悪用されることがないよう、省令で定めることとなる認定の基準等については、有識者や現場関係者等の意見を十分に踏まえ、適切なものとするとともに、地方公共団体における計画の認定やその取消しを含む認定事業者等に対する監督が厳正かつ適切に実施されるよう働きかけること。
六 居住安定援助賃貸住宅又はサービス付き高齢者向け住宅について目的外使用を行う場合の省令で定めることとなる入居者を確保することができない期間については、本来入居対象となっている住宅確保要配慮者等の円滑な入居を妨げることがない適切な期間とすること。
七 住宅確保要配慮者居住支援法人の業務の拡大に伴い省令で定めることとなる指定の基準等については、既存の居住支援法人の業務運営に支障を来すことがないよう、その業務実績等を十分に踏まえ、適切なものとするとともに、住宅確保要配慮者のニーズに応じた居住支援サービスの充実化に向け、居住支援法人に対する国による支援措置の強化について検討すること。
八 残置物処理を居住支援法人の業務として法的に位置付けるに当たり、これまで残置物処理を行ってきた専門業者等との間で業務実施のための過当競争により、残置物処理の質が損なわれることのないよう、所要の措置を講ずること。
九 認定家賃債務保証業者の省令で定めることとなる認定の基準等については、入居後の過度な取立て等が行われることのないよう、適切なものとするとともに、国土交通大臣による認定家賃債務保証業者に対する認定やその取消しを含む監督が厳正かつ適正に実施されるよう努めること。
十 市区町村による住宅確保要配慮者居住支援協議会の設置やその運営体制の確立が円滑に進むよう、必要な支援を行うこと。あわせて、居住支援協議会には、高齢者、障害者などの住宅確保要配慮者の意見や要望が反映されるよう、多様な者が構成員として参画が図られるようにすること。
十一 我が国の住宅セーフティネットの根幹である公営住宅を始めとする公的賃貸住宅政策について、本法による住宅セーフティネット機能の強化と併せ、引き続き着実に推進するとともに、その充実に努めること。また、十分に活用されていない公的賃貸住宅等のストックの積極的な活用を図るとともに、そのために必要な改修費等の財源の確保を図ること。
十二 UR賃貸住宅について、セーフティネット登録住宅として活用が可能とされていることから、その役割を果たすために住宅確保要配慮者向けにも空き住戸の積極的な提供が図られるようにすること。あわせて、独立行政法人都市再生機構法に規定されている家賃の減免措置について、経済的負担軽減のために実施されるよう、強く働きかけを行うこと。