アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。
一 「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の趣旨を踏まえ、並びに過去の国会決議及び本法に基づき、アイヌ施策を推進するに当たっては、我が国が近代化する過程において多くのアイヌの人々が苦難を受けたという歴史的事実を厳粛に受け止め、アイヌの人々の自主性を尊重し、その意向が十分反映されるよう努めること。
二 アイヌ文化の振興等に資する環境の整備に関する施策の推進に当たっては、アイヌの人々の実態等の把握に努めるとともに、国、地方公共団体等の連携の強化を図ること。
三 アイヌの人々に対する差別を根絶し、アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と共生社会の実現を図るため、アイヌに関する教育の充実に向けた取組を推進すること。
四 アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と我が国の多様な生活文化の発展を図るため、アイヌの人々の生活支援及び教育支援に資する事業や、存続の危機にあるアイヌ語の復興に向けた取組、アイヌ文化の振興等の充実に今後とも一層努めるとともに、アイヌの人々が北海道のみならず全国において生活していることを踏まえて、北海道外に居住するアイヌの人々を対象とする施策の充実に努めること。
五 本法に基づく措置、とりわけ交付金制度については、本法の目的に沿ってアイヌ施策を適正かつ効率的に推進するため、制度の適切な運用を図ること。
六 本法において特例措置が設けられる認定アイヌ施策推進地域計画に係る地域団体商標の取得を契機に、アイヌ文化のブランド化の確立など産業振興を図るために、交付金制度の活用や国等からのノウハウの提供等により、アイヌの人々の自立を最大限支援すること。
七 内水面におけるさけの採捕や国有林野における林産物の採取といった本法の特例措置に関し、アイヌにおいて継承されてきた儀式の保存又は継承等を事業の目的とする趣旨に鑑み、関係機関と緊密な連携の下、アイヌの人々の視点に立ち、制度の円滑な運用に努めること。
八 民族共生象徴空間への来場により国内外におけるアイヌの伝統等に関する理解の促進が一層図られるよう、広報活動やアクセスの改善等を図ること。また、民族共生象徴空間に関し、適切な運営が図られるよう指定法人に対する指導監督に努めること。