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    地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。

 

一 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向け公共交通をいかした総合的な交通政策を推進する必要があることに鑑み、過度に自家用自動車に依存せず、ポリシーミックスの観点から、まちづくり政策、DX、GX、国土強靱化などの様々な政策との連携を図るとともに、雪国などの地域特性を考慮した施策の充実を図ること。また、モビリティとインフラを一体とした交通ネットワークの再構築について検討し、国土形成計画等に反映させること。

 

二 国及び地方公共団体は、地域住民の移動を確実に確保し、地域公共交通を持続可能なものとするため、交通事業者等の取組に対する支援を更に拡充するよう努めること。また、地域公共交通の持続可能な発展を図るため、実証事業などの期間のみならず、それ以降も活用可能な中長期的な支援の取組や、安定的な財源の在り方を検討すること。

 

三 JR上場四社は、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律に基づく大臣指針に基づき、現に営業する路線の適切な維持に努めることが大前提であり、特に、特急列車が拠点都市を相互に連絡する線区、貨物列車が現に走行している線区及び災害時や有事において貨物列車が走行する蓋然性が高い線区については、我が国の基幹的な鉄道ネットワークを形成する線区として、各社に対し、内部補助により引き続き維持するよう指導するとともに、国鉄分割民営化以降の社会経済状況の変化を踏まえ、国としても鉄道ネットワークの維持の在り方について今後の国の関与の在り方も含め検討すること。

 

 

四 再構築協議会における地域の鉄道に関する協議の在り方について、廃線ありきではないこと、旅客数や収支だけで判断するのではなく、地域住民の意向や地域に与える影響等を十分に考慮して総合的に判断すべきことなどを基本方針で明確にすること。また、結論が合理的な期限内に出ない場合であっても、協議を打ち切ることなく丁寧な合意形成に努め、合意のない交通手段再構築等は行わないこと。

 

五 再構築協議会の協議においては、地域公共交通が失われることによる、新たに生じる医療機関へのアクセスコストの増加、観光業への打撃、商業的な損失、地価の下落、就学機会の制限による人口構成の変化等、広範なクロスセクター効果について十分に検討を行うこと。

 

六 再構築協議会の構成員については、地域の実情に応じて住民、労働者、物流事業者等を含めることとし、多様な意見が反映されるようにすること。また、少数意見等の反映されない意見等を継続的にくみ取るための更なる仕組みづくりについて検討すること。

 

七 再構築協議会を含む地域公共交通に係る協議会については、会議開催後速やかに議事録を公開するなど最大限透明化を図ること。

 

八 上下分離による鉄道の維持やBRTの導入等、再構築協議会で合意された事業に対しては、どのような協議の結果となったかにかかわらず、協議の過程にも配慮した、十分かつ公平な支援を行うこと。

 

九 再構築方針で定められる交通手段再構築の目標の達成状況の評価が適時適切に行われるよう促すとともに、地域が評価の結果を踏まえ、検討を行い、交通手段再構築の事業の見直し等を行うときは、的確な支援を行うこと。

 

 

十 地方公共団体や公共交通事業者による連携と協働を推進するため、地方公共団体の交通政策に精通した専任職員の確保と育成は極めて重要であることに鑑み、こうした人材を適切に配置するための地方交付税措置による財政的支援を検討するとともに、コーディネーター等に係る情報提供などを積極的に実施すること。また、地域公共交通の活性化や再生に向けた議論やその実施される事業の実効性を担保するためには様々な専門家やファシリテーターの存在が極めて重要であることから、その確保に取り組む地方公共団体に対し十分な支援を行うこと。

 

十一 乗合バス等自動車運送事業の運転者が不足している状況に鑑み、路線維持や鉄道をバスに転換する場合に運転者が確保できない懸念もあることから、その確保のための支援策を講じること。

 

十二 地域を支える最後の公共交通機関であるタクシーの維持存続のため、地方公共団体と連携、協働し、経営を支援するための措置を講じること。

 

十三 地域公共交通の「リ・デザイン」を図りつつGXを加速させる観点から、カーボンクレジットの導入等EVバスの地域への導入のインセンティブとなる制度について検討すること。

 

十四 鉄道事業者が、協議によって鉄道の運賃等を設定する場合においては、現在の運賃水準と比較して値上げとなることも想定されるため、当該鉄道事業者に対し、利便性の向上等地域の利用者の理解を得るための取組も併せて行うことを働きかけるよう努めること。

 

十五 運賃を協議するための協議会に先立ち開催される公聴会については、できる限り幅広い意見を反映させるため、地方公共団体に対し、開催の回数や方法にも配慮するよう求めること。

 

 

十六 本法の施行状況について毎年度評価を実施し、施策を適切に見直すとともに、改正後のそれぞれの法律の規定について、その施行の状況等を勘案して検討を加え、必要があると認めるときは、附則で定める検討条項の五年を待つことなく、検討の結果に基づき所要の措置を講ずること。

 

十七 公共事業関係予算を、地域公共交通の施設やネットワーク維持に、積極的に活用できる仕組みを検討するとともに、公共交通と他の事業とのバランスの取れた支援を行うこと。また、社会資本整備総合交付金を交付するに当たっては、具体の支援対象や支援額を計画的に分かりやすく地域に示すこと。

 

十八 通学定期や障害者割引等の社会政策に係る費用を交通事業者が負担していることを踏まえ、文教や福祉分野においても交通事業者支援のための仕組みづくりについて、検討すること。

 

十九 並行在来線等、第三セクターの鉄道事業者において、国鉄及びJRから引き継いだ設備の補修、更新費用が大きな負担となっている現状も踏まえ、先行地域も含めた支援を充実するよう努めること。

 

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