都市緑地法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。
一 国の基本方針を定めるに当たっては、気候変動対応、生物多様性確保、幸福度の向上などの観点に基づく定量的な指標等を盛り込み、今後の目指すべき都市緑地の姿について具体的に示すこと。また、取組の進捗状況について定期的な把握とその評価を実施するとともに、必要に応じて目標達成のために追加的施策を講ずること。
二 特別緑地保全地区等内の緑地の買入れに当たっては、都市緑化支援機構が国から都市開発資金の無利子貸付けを受けて実施する制度に加え、地方公共団体への支援の拡充とともに、国が直接買入れを実施する制度についても追加を検討すること。
三 機能維持増進事業の実施に当たっては、防災上危険な場所で優先的に実施すること、事業実施後も緑地の状況変化に応じた継続的な対応が求められる可能性があること、地域をよく知る地域住民や有識者などの声に丁寧に対応することなどにも留意しつつ、都市と地方それぞれの地域の実情を踏まえた取組を行うよう、また、都市緑化支援機構が実施する場合においては、これらを踏まえた業務実施協定が締結されるよう周知すること。
四 都市緑化支援機構による機能維持増進事業の対象に、新たに都道府県等が買い入れる土地以外の既に指定されている特別緑地保全地区等も加えるよう検討すること。
五 都市緑化支援機構の指定に当たっては、全国での緑地の買入れや機能維持増進事業の実施を行う法人として独占的地位が与えられることを踏まえ、その指定手続過程の透明性を図ること。また、指定を受けた法人が、いわゆる新たな天下り先となることを防止する観点からも、経営体制等の情報公開などを積極的に行うよう指導監督を徹底すること。
六 都市緑化支援機構に対する都市開発資金の無利子貸付けに当たっては、その要望額の根拠となる機能維持増進事業等に要する費用の透明性や妥当性について十分検証を行うとともに、全体の事業量を確認し必要十分な予算の確保に努めること。
七 都市緑化支援機構や地方公共団体に限らず、都市緑地の維持管理を行う者として重要な役割を担っている地域のボランティアやNPOなどに対しても、持続可能な活動を行うための財政的支援を講ずること。
八 優良緑地確保計画について、認定手続の透明性を確保するため、開発に見合った必要な緑地の割合を示すなど認定審査の基準を明確化すること。また、民間事業者等による緑地確保の取組も重要であることを踏まえ、認定制度の効果的な活用が図られるよう、認定を受ける具体的なメリットを十分に周知すること。
九 都市開発により損なわれる生態系の価値と同等の土地等を確保するミティゲーション制度等の取組について、調査研究や導入の検討を進めること。
十 都市緑地は、その立地状況から相続時に宅地開発事業者などに売却されることが多いことを踏まえ、都市緑地の維持や保全を図る観点から、相続時の納税猶予制度の創設や民有緑地の物納許可の拡充など税制面での負担軽減措置について検討を行うこと。
十一 民間都市開発推進機構による再生可能エネルギー発電設備等への金融支援は、他の再生可能エネルギー事業との公平な競争に配慮して、民間資金では実現しえないもの等に限定して行うよう努めること。