老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。
一 管理者による共用部分に関する損害賠償請求権の代理行使に当たり、旧区分所有者の取り分も含む損害賠償金を確実に修繕費用に充当することができるよう、損害賠償金の使途を定めることを内容とする標準管理規約の改訂を早期に行い、各管理組合において管理規約の改訂が速やかに行われるよう関連団体等を通じて働きかけを行うこと。一方で、そもそも管理組合自体がない等、管理不全マンションの区分所有者に対しても必要な措置を講じること。
二 標準管理規約の改訂を踏まえ、各管理組合の管理規約において共用部分について生じた損害賠償金の使途を定める規定の制定状況の把握に努めること。また、管理規約に同内容が規定されなかったこと等により、旧区分所有者による別段の意思表示が行われた結果、損害賠償金の一部が修繕費用に充当できなかった事例の実態把握に努め、必要に応じ所要の措置を講じること。
三 マンションの管理や再生が円滑に行われるよう、地方公共団体、管理組合、区分所有者等に対し、本法により、区分所有権の処分を伴わない決議が集会への出席者による多数決で可能となることや、マンションの再生等に活用可能な事業手法が増加すること等について、周知徹底を図ること。
四 管理不全マンションの増加を防ぐため、マンションの管理水準向上に資する管理計画認定制度が新築時から積極的に活用されるよう、分譲事業者に対し、管理計画の作成を積極的に促すこと。また、管理水準の高いマンションの資産価値が適正に評価されるよう、市場環境の整備に努めること。
五 管理組合自体がないような既存の管理不全マンションについては、管理組合の設立から、管理計画の策定及び実施に至るまで、地方公共団体が伴走支援を行うよう働きかけを行うこと。
六 マンション管理業者が管理事務及び管理者事務の双方の委託を受けている場合、利益相反により区分所有者が不利益を被ることのないよう、本法に規定された事前説明の確実な実施に加え、マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドラインを踏まえた対応を行うことについて、関連団体等を通じて周知徹底を図ること。
七 マンションの再生事業等により新たに住まいを確保する必要がある場合には、高齢の区分所有者や借家権者など住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保を十分に図ること。また、公営住宅等の公的賃貸住宅の活用が図られるよう、地方公共団体への的確な支援に努めること。
八 マンションの管理及び再生に当たっての助言指導や勧告、再生事業等の認可などに当たっては、地方公共団体が担うマンション関連事務が増加することから、マニュアルの整備やマンション政策の担当者の育成支援など、その負担軽減のために必要な措置を講じること。
九 マンションの管理及び再生に当たっては、知識や経験を有する民間団体を積極的に活用するため、十分な数のマンション管理適正化支援法人が確保されるよう、関連団体に対し、登録の働きかけを行うこと。また、管理組合等に対し、マンション管理適正化支援法人の活用方法等について分かりやすく情報発信を行うこと。