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   労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 遺族補償年金における夫婦間の支給要件の差の解消に当たっては、単に夫婦間の差を是正するにとどまらず、労働者の業務上の死亡によって失われた遺族の被扶養利益の喪失の補填という労災補償としての制度趣旨を十分に踏まえること。今後、生計維持要件、給付期間、支給要件その他遺族補償年金制度の在り方を検討するに当たっては、労災補償としての責任を薄めることなく、遺族が真に生活を立て直すことができるよう、年金給付に加え、就労支援、心理的支援、子育て支援その他の生活再建支援との連携の在り方についても検討すること。

二 今回の消滅時効期間の延長が一部の疾病に限定されたことを踏まえ、介護(補償)等給付において時効徒過による不支給の割合が高い実態を深刻に受け止めるとともに、消滅時効期間の周知に取り組むこと。併せて、労災保険給付請求が遅れる理由は、疾病の性質により発症後直ちに業務起因性を判断することが困難である場合に限られず、労災保険制度に関する認知の不足、医療機関において労災請求の可能性が十分に示唆されないこと、事業主からの働きかけ、事業主との関係悪化への懸念等により請求をためらう場合もあることを踏まえ、こうした事情により本来受けられるべき給付に到達できない者が生じることのないよう、相談支援、周知啓発及び運用改善に取り組むこと。本法施行後は、対象となる疾病の範囲について、施行状況を踏まえ、必要な拡大を検討すること。

三 暫定任意適用事業の廃止に伴い、新たに労災保険の適用対象となる農林水産業の経営体について、その実態把握を適切に行い、労災保険への加入を確実に進めるとともに、新たに事務的負担等が生じることから、必要な支援を検討すること。特に、制度上は強制適用の対象となるにもかかわらず、保険関係成立届その他必要な手続が行われない未手続事業が生じることのないよう、対象となる経営体の把握、個別周知、加入手続支援及び関係機関との連携体制の整備に努めること。また、農林水産業の現場には、家族従事者、短期雇用、季節的な手伝い、乗組員、共同作業、親族の無償協力等、多様な就業実態が存在することを踏まえ、誰が労働基準法上の労働者に該当し、労災保険法の適用対象となるのかについて、具体例を含めて分かりやすく明示すること。さらに、セーフティネットの空白を早期に解消する観点から、公布後五年以内とされる施行期日を待たず、任意加入の促進も含め、可能な限り速やかな移行を促すこと。

四 特別加入団体の承認要件の法定化に当たっては、事務処理体制や財政基盤のみならず、加入時の審査や業務災害防止措置の実施状況を厳格に判断する基準を策定すること。不適切な特別加入団体に対しては、承認取消しも含めた厳格な指導・監督を行うこと。また、特別加入団体の承認取消しを行った場合において、特別加入者の保護が損なわれることがないよう、厚生労働省は、実効性のある指導・監督を行うとともに、特別加入団体の取消しを行った場合においても、特別加入者が不利益を被ることのないよう救済措置を設けるなど万全の措置を講ずること。

五 特別加入団体に係る省令その他の運用基準を定めるに当たっては、労働保険事務組合と特別加入団体の役割の違いを明確にすること。特に、特別加入団体については、単なる労働保険事務の処理にとどまらず、加入者の就業実態を踏まえた業務災害防止措置、労災保険給付等請求支援、事故発生後の相談対応その他の継続的支援を担う主体であることを踏まえた制度設計とすること。

六 特別加入団体が行う業務災害防止措置については、団体間で実施内容、実施量及び継続的支援体制に差異があることを踏まえ、実施報告、監査その他の適切な方法により取組状況を的確に把握すること。また、好事例の横展開その他の措置により、業務災害防止の実効性を高めること。

七 特別加入者の保険料については、建設業分野において建設業法等に則り、安全衛生経費等として適切に確保する取組が進められていること、また、芸能分野においては「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン」において発注者と保険料負担について協議することが望ましいとされていることを踏まえ、その取組が広がるよう、厚生労働省において周知すること。

八 「曖昧な雇用」で働く者も含め、労働基準法の「労働者」に該当する者は確実に労災保険法の適用対象とすること。その上で、特別加入制度の活用に当たっては、本来、労働基準法の「労働者」に該当する者が強制適用の労災保険本体ではなく、本人の保険料負担による特別加入を強いられることがないよう、厚生労働省及び特別加入団体における審査体制を抜本的に強化すること。特に、特別加入の事実のみをもって否定的な判断がなされることのないよう、行政運営における徹底を図るとともに、「実態は労働者」と思われる者が特別加入している場合には、速やかに強制適用への是正を指導すること。

九 家事使用人への労災保険適用については、労働基準法の改正論議を注視しつつ、特別加入における保険料の本人負担という現状が加入の妨げとなっているという意見があることも踏まえ、必要な検討を行うこと。

十 特別加入者に係る業務災害については、契約書等が十分に浸透していない就業実態や、人手不足、代替要員不足等により休業補償給付を請求しづらい業界の実態があるとの声を踏まえ、労働保険事務組合その他の関係機関が、形式的な判断により給付請求を妨げ、いわゆる労災かくしに類する事案を生じさせることのないよう、必要な監査、指導及び是正措置を講ずること。

十一 政府は、メリット制と労災かくし、労災保険給付受給者への報復行為等との因果関係について実態調査を実施するとともに、その結果に基づき、労災かくし等を行う事業主への対応強化も含め、メリット制の在り方について検討を行うこと。その際、労災かくしの実態把握に当たっては、送検件数のみによることなく、相談件数、是正指導件数、労災申請を断念した事案、労災保険給付の請求又は受給を理由とする退職勧奨、復職拒否、雇止め、配置転換、評価上の不利益その他不利益取扱いに関する相談等も含め、労働者が労災申請をためらう実態を的確に把握すること。

十二 労災支給決定情報の事業主への提供に関する運用の見直しに当たっては、提供する情報を必要最小限の範囲に限定すること。また、労災かくしや不利益取扱いを行った事業主に対しては情報提供を停止するなど、労働者の保護に万全を期すこと。

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