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   健康保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 出産の標準的な費用に係る給付体系の見直しに当たっては、妊産婦の経済的負担の軽減や妊産婦が納得感を持ってサービスを選択できる環境整備が重要であり、その前提となるサービス内容と費用の見える化、それに基づく標準化を確実に実施し、安全・安心な出産ができる環境整備に向け、周産期医療提供体制の確保に最大限努めること。また、当分の間、出産育児一時金の適用を受けることを可能とする経過措置については、妊産婦の選択に不利益・不公平が生じたり、保険者に過度な事務負担が生じたりすることのないようにしつつ、厳しい労働・経営環境に置かれた分娩施設の状況と意向を十分に踏まえること。さらに、新たな給付体系へ速やかに移行できるよう、国から分娩施設への丁寧な説明など、所要の措置を講ずること。

二 分娩施設の体制維持・確保、産科医の確保や地域偏在の解消など、周産期医療提供体制の整備は、国のインフラ整備に関わる問題であり、公費による支援を含む必要な対応策を検討すること。

三 分娩費、出産時一時金等の金額の設定に当たっては、医療保険財政及び保険料負担への影響を十分に考慮するとともに、分娩施設を始めとする関係者の意見を十分に踏まえること。とりわけ、地域における分娩施設の経営実態を踏まえた標準的費用の設定、加算措置その他必要な措置を講ずること。また、物価動向や人件費その他の経済状況の変化に適切に対応する観点から、関係者の意見も踏まえつつ、不断に見直すこと。

四 妊婦の希望に応じて安全・安心な出産ができる環境整備に向け、麻酔を実施する医師の確保や安全管理体制の標準化など、安全で質の高い無痛分娩や痛みの緩和を目的とした処置の提供体制確保のための方策を講ずること。

五 多胎妊婦に対する妊婦健康診査について、単胎妊娠を前提とした現行制度との間に生じている経済的負担及び支援の地域間格差の実態を踏まえ、多胎妊娠の医学的特性に応じた標準的な健診内容の在り方の検討を行うとともに、多胎妊婦健康診査支援事業の全国的な実施率向上に向けた具体的な方策や国の関与の在り方を含め検討すること。また、民間団体等との連携による周知・支援体制の強化及び申請手続による当事者の負担の軽減に必要な措置を検討すること。

六 医療機関における業務効率化・勤務環境改善への責務明確化に当たっては、医療機関における業務効率化・勤務環境改善への取組推進に向けて適切に支援するとともに、現場の実態を幅広く把握・検証し、医療の安全性や質の担保、患者のプライバシー・個人情報の保護への留意とともに、現場労働者の負担軽減に資する取組となるよう留意すること。

七 一部保険外療養の施行に当たっては、薬剤の支給において、要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性の高いものであっても、配慮が必要な者への措置は将来にわたって維持すること。また、国民の受診機会の確保、重症化の防止及び医療費への影響等を総合的に勘案し、患者に過度な負担を生じさせることのないよう十分配慮すること。さらに、制度導入後の影響について実態を把握・検証し、適時、ホームページ等で広く公表しつつ可逆的な見直しを含む必要に応じた見直しを行うこと。

八 一部保険外療養の対象範囲については、薬剤以外の診療行為を含めるべきではないという指摘もあったこと等を踏まえ、十分に検討すること。

九 一部保険外療養に係る対象薬剤や要配慮者の範囲、患者負担割合の検討に当たっては、患者・国民及び関係者に対して丁寧な説明を行い、その意見を十分に踏まえること。また、検討過程の透明性を確保する観点から、検討のための資料及びデータ、前提条件等について出来る限り詳細に関係審議会等に提出し、議論の内容を明らかにすること。

十 医療保険制度において、高額療養費等の制度が国民の生命及び生活を守る上で欠くことのできない中核的な役割を果たしていることに鑑み、将来の見直しに際しても、高額療養費等の支給を受ける者が療養等に必要な費用の負担により生活に困窮することのないよう、高額療養費等の支給要件、支給額その他高額療養費等の支給に関する事項は、高額療養費等の支給を受ける者の「療養等に必要な費用の負担が家計に与える影響」及び「必要かつ適切な受診に与える影響」を考慮して定めること。また、その際には、高額療養費等の支給を受ける者の「給与等の収入の状況及び当該収入の変動状況」、「子等の扶養に係る支出、とりわけ教育費に係る支出等の状況」及び「療養等の状況等の生活の実態」など、高額療養費等の支給を受ける者の多様性に留意すること。さらに、高額療養費等の支給を受ける者の収入の状況等に応じ、きめ細かく、かつ、できる限り利便性に配慮した支給要件とすること。加えて、高額療養費等の支給要件、支給額その他高額療養費等の支給に関する事項を定めるに当たっては、引き続き、その手続に当たり、高額療養費等の支給額の算定に関する資料その他の必要な資料を提示して、高額療養費等の支給を受ける者、高額療養費等の支給を受ける者に対する医療に従事する者、高額療養費等に関して学識経験を有する者、保険者や保険料納付者である労使等を社会保障審議会に参画させ、その意見を聴くための措置を講ずること。

十一 高額療養費制度の支給要件等の見直しに当たっては、多数回該当や年間上限に該当しない患者であっても必要な医療へのアクセスが阻害されないように留意すること。また、制度の見直しによって、国民の健康状態の悪化や医療費の増大につながることのないよう、所得区分別、年齢別、疾病別など詳細な影響を継続的に検証し、必要に応じて速やかに見直しを行うこと。さらに、制度の一層の機能強化に向け、保険者間の情報連携などの方策について検討を進めること。個人事業主の長期の療養の保障に向け、被用者保険との格差是正に向けて検討を進めること。

十二 高額療養費制度において、現役世代の負担軽減に向け、保険者変更に関わる多数回該当の初期化、合算可能レセプトに係る金額要件や歴月単位判定、償還払いによる一時的負担など制度運用の改善に向けて継続的に検討を進めること。

十三 後期高齢者医療制度における金融所得の勘案に当たっては、公平な負担及び支払い能力に応じた負担の実現という観点から、持続可能な医療保険制度の在り方を検討すること。制度導入後の後期高齢者の受診などへの影響について実態を把握・検証し、必要な見直しを行うこと。また、同制度においては、現在、現役並み所得の被保険者の給付費が公費負担の対象とならないことも踏まえ、高齢者の窓口負担割合の検討の中で現役世代の保険料負担への配慮も含めた制度の在り方を検討し、所要の措置を講ずること。

十四 金融所得の公平な反映を目指す後期高齢者医療制度や国民健康保険の事務の実施について、デジタル技術の活用や都道府県国民健康保険団体連合会の活用を推進するなど自治体の事務負担の軽減に努めること。その際、自治体支援を進めるため、同連合会の全国組織である公益社団法人国民健康保険中央会の強化について、その在り方も含めて検討し、必要な措置を講ずること。

十五 全国健康保険協会への国庫補助の在り方については、国庫補助が財政基盤の安定につながってきたことや、保険者機能の十分な発揮の観点、その財政運営の実態等も勘案しつつ検討するとともに、今回の改正による時限措置終了後における保険財政運営の在り方については、中長期的な視点で検討すること。その際、きめ細かく有効な疾病予防・健康づくりの推進を可能とする体制を確立するよう努めること。

十六 子育て世帯の保険料負担の更なる軽減について、軽減措置の更なる拡充を含めた検討を進めること。

十七 国民健康保険制度の財政安定化基金の運用見直しについて、保険料抑制に向けて、制度導入後の影響について実態を把握・検証し、必要な見直しを行うこと。

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