医療法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 地域医療の確保と公平な医療へのアクセスの観点から、オンライン診療について、時間、距離、対面診療の割合等について過剰な規制を設けないこと。
二 患者の受療機会の確保と精神医療の充実の観点から、患者の安全性を踏まえ、科学的根拠がある場合にはオンライン精神療法の初診の在り方を検討すること。
三 現場の実態に即した制度設計の観点から、オンライン診療を行う患者の容態急変の事態に備えた患者所在地近隣の医療機関との受入れの合意取得については、現行の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が離島など急変時の対応が困難な地域に限った運用としていることを踏まえ、地域の制限なく一律に合意取得を求めるような過剰な規定は設けないこと。
四 精神科の地域医療の充実と精神障害者の地域移行の促進を図るため、退院後の障害者の地域生活の基盤整備を着実に推進するとともに、長期入院患者を減らすため、非稼働病床数の範囲にとどまることなく、より計画的かつ効率的に適正化・機能分化等を推進すること。
五 医師手当事業の実施に当たっては、その費用に保険料が充当されることを踏まえ、拠出者である保険者の本来の機能を棄損することなく、また、被保険者の負担や制度の公平性に十分留意し、重点的に医師の確保を図る必要がある区域に派遣された医師及び従事する医師に対して実際に支払われた手当増額に使途を限定した上で、目安を示すほか、拠出者である保険者協議会を含む保険者がその実施状況等について確認や検証を行い、意見を述べるなど関与できる体制を確保すること。加えて、社会保障改革を進めていく中で現役世代の保険料負担を抑えるとの方針の下、当該事業により保険料が上昇しないよう保険給付と一体的に対応を図ること。
また、安易に保険料財源を充てる前例とせず、引き続き医師偏在対策に向けて、憲法上の職業選択の自由や営業の自由と保険医療機関の指定との関係を整理し、更なる規制的な手法を検討するとともに、対策の効果検証を定期的に行い、必要な見直しを行うこと。
六 電子カルテ情報共有サービスの運用に伴う費用の負担について、サービスの普及状況及び効果等を定期的に検証した上で、最低でも五割程度の普及率に達するまでの基盤整備期間中は、国において必要な財政支援を行うこと。
七 社会保険診療報酬支払基金の組織体制の見直しに当たっては、新たな医療情報基盤・診療報酬審査支払機構が、引き続き審査支払機能を果たせるよう、人員配置を含め、適切な運営体制を確保すること。
八 地域医療介護総合確保基金の運用状況を踏まえ、新たに市町村が都道府県と連携して「医療機関の施設又は設備の整備に関する事業」及び「医療従事者の確保に関する事業」を行うモデル事業を実施し、その実施状況を踏まえ、地域医療介護総合確保基金の運用の在り方を含め、事業の在り方について検討を行うこと。
九 医療計画で定める都道府県において達成すべき五疾病・六事業、在宅医療の確保の目標設定、当該目標達成のための実効性のある取組及び当該取組の効果に係る評価の実施が総合的に推進されるよう、厚生労働大臣は必要な助言を行うことを明記することについて検討を行い、早急に結論を得ること。
また、年間の手術数や病床の稼働状況等一定の指標に基づいて、医療機関の連携・機能分化・集約化等の状況を評価し、地域医療構想の推進に関するPDCAサイクルが円滑に実行されるよう、その支援に努めること。
十 医療機関の業務における情報の電子化の実現に当たっては、官民データ活用推進基本法第二条第四項に規定するクラウド・コンピューティング・サービス関連技術その他の先端的な技術を活用すること。
十一 介護・障害福祉従事者の適切な処遇の確保についての検討は、介護・障害福祉に関するサービスを担う優れた人材の確保が要介護者等及び障害者・障害児に対するサービスの水準の向上に資することにも鑑み、介護・障害福祉に関するサービスの種類ごとの介護・障害福祉従事者の処遇の状況等を踏まえて行うこと。
十二 地域医療構想の推進にも資するよう、外来医師過多区域における新規開設者のみならず既存の無床診療所についても、現に診療が行われていることや、地域の医療提供体制の確保に留意しつつ、改正後の医療法第三十条の十八の六に規定する届出事項に準ずる事項に関する実態を把握するための必要な環境整備の検討を行うこと。
十三 総合診療専門医の育成と活用に向けた取組を更に推進すること。また、薬剤師や看護師等医師以外の医療従事者の職能の向上と活用に向けた取組を進めること。
十四 良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築するため、かかりつけ医機能に関する診療報酬制度について、疾病に応じた包括支払制度の在り方について検討を行うこと。

