大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一
各国において難治性てんかん治療薬として承認されている大麻から製造された医薬品について、我が国において薬事承認を受けた場合に備えて、その製造や施用が適切に行われるよう、免許制度等の流通管理の具体的仕組みを適切に運用すること。
二 今般の大麻から製造された難治性てんかん治療薬の処方については、今後の承認審査において、研修の受講等の一定の資格を満たす医師が行う等の要件の必要性について検討すること。また、小児のてんかん患者に関して、発作時の介助、急な発作に備えた生活環境整備等についての患者本人や家族への支援を検討すること。
三 第一種大麻草採取栽培者が大麻草の栽培に用いる種子等のテトラヒドロカンナビノールの含有量の基準や濫用による保健衛生上の危害が発生しない量として定めるテトラヒドロカンナビノールの製品中の残留限度値については、米国や欧州の基準等を参考に合理的なものとすること。
四 テトラヒドロカンナビノールの残留限度値を担保するため、その検査法や検査体制については、明確かつ実効性があり、事業者による対応が可能なものとすること。
五 カンナビジオールを使用した製品について、安眠等の機能を過度に強調した広告で消費者が惑わされることのないよう、監視指導を行うこと。
六 大麻草を活用した産業の育成を図る場合には、関係省庁が連携して進めるようにすること。
七
大麻の不正な施用に対する罰則について、大麻不正施用者が一層周囲の者に相談しづらくなり、その孤立を深め、偏見を助長するおそれがあるとの指摘があることを踏まえ、大麻不正施用者に教育プログラムや治療プログラム、就労支援プログラム等への参加等を推進する仕組みの導入、大麻不正施用者が安心して相談できる体制整備等について検討すること。また、大麻不正施用罪の検挙・立証に必要な証拠の研究等の適正な取締りを実施するための方法を検討すること。
八
大麻乱用者その他の薬物事犯者の薬物再乱用の防止のため、保護観察期間中における治療・支援につながるための働きかけの強化、保護観察期間満了後や満期釈放後の自発的な地域における治療・支援につながることができる取組の実施、保護観察の付かない執行猶予者や起訴猶予者に対する治療・支援等について、薬物事犯者に対する長期的な支援を目指して関係機関が連携しながら総合的な取組がなされるよう検討すること。
九
大麻に有害性はない、健康に良いなどといった誤った情報が氾濫し、若年者の大麻事犯が増加し続けている現状に鑑み、大麻の乱用について開始時期が早く、使用量が多く、乱用期間が長いほど依存症となるリスクが高まること等科学的根拠に基づいた大麻の有害性に関する正確な情報を取りまとめ、必要以上に薬物使用の恐怖を煽ることなく、若年者の視点を生かしながら、教育の現場等における分かりやすい乱用防止のための広報啓発活動等に取り組むこと。
十
我が国の薬物乱用対策は、違法薬物に手を出さない一次予防に重きが置かれた結果、薬物依存症者に対する差別を助長しているのではないかとの指摘があることを踏まえ、今後の対策に当たっては、一次予防のみならず、違法薬物を使用してしまった者の早期発見及び早期介入並びに早期治療を行う二次予防、薬物依存症者に対する再発防止や社会復帰等を支援する三次予防についても配慮して実施すること。