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   児童福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 子育て世代包括支援センターと子ども家庭総合支援拠点の再編や支援計画の作成については、地方自治体における負担増によって、それぞれの機能が停滞することのないよう、必要な人材確保のための支援を行うとともに、円滑な施行に向け、地方自治体と適切に連携すること。

二 保育士の人材確保が困難な状況にある中、新たに身近な子育て支援の場として保育所等を活用し、地域子育て相談機関とするに当たっては、保育士等の一層の処遇改善と職員配置基準の改善を併せて検討すること。

三 子育て世帯訪問支援事業、児童育成支援拠点事業及び親子関係形成支援事業の各事業の実施に当たっては、各市町村による担い手の確保が重要であることから、必要な人材確保のための支援を行うとともに、業務に見合った処遇について検討を行い、必要な措置を講ずること。

四 一時保護所の設備・運営基準の策定に当たっては、職員の立場ではなく子どもの視点に立って子どもの最善の利益を考慮するため、子どもから意見を聴取し、可能な限りその意見を反映すること。

五 里親支援センターの設備・運営基準の策定に当たっては、里親等の当事者から意見を聴取し、可能な限りその意見を反映して実効性のあるものとすること。

六 自ら公的な支援にアクセスできない妊婦との接点を持つための具体的方策を検討するほか、妊産婦等生活援助事業の実施に当たっては、支援が必要な妊産婦に対し適切な支援を提供できるよう、新たな人材を確保するため職員の処遇改善を含む方策を検討し必要な措置を講ずるとともに、充実した研修を実施し、資質の向上を図ること。また、人材不足を理由とした人員配置の弾力運用を安易に行うことのないようにすること。

七 意見表明等支援事業に関し、子どもの意見・意向表明や権利擁護に向けた環境整備について、都道府県によって差が生じることで子どもに不利益となることがないよう、一定の要件を提示すること。また、子どもへの意見聴取等が適切に実施されているかについて評価及び検証を行うこと。

八 意見表明等支援事業が都道府県等の努力義務であるため、子どもの意見等が適切に反映されないおそれがあることから、導入した自治体と導入しなかった自治体を科学的に比較して効果測定を行い、適宜その仕組みを改良していくこと。また、次期児童福祉法改正時に都道府県等の体制が整備されるよう、義務化を含め必要な見直しを検討すること。

九 意見表明等支援事業が児童相談所等による意見聴取等の補佐的な事業として位置付けられていることについて、当該事業が権利主体である子どもの自由な意見・意向の表明を支援する独自の機能を持つべきものであることに鑑み、必要に応じて見直しを検討すること。

十 意見表明等支援員が児童相談所、都道府県その他の関係機関から独立した立場で子どもの自由な意見・意向の表明を支援することが可能となるよう、独立性及び守秘義務等の必要な措置を講ずること。

十一 意見表明等支援員には専門的な知識や技術が求められることから、科学的な評価がなされているプログラムにより育成することとし、十分な資質を持つ者を活用すること。

十二 意見表明等支援事業において、子どもの視点に基づいたKPI(重要業績評価指標)で表すこと。

十三 子どもの最善の利益のため、一時保護時の子どもへの意見聴取等を適切に行い、子どもの意見・意向を考慮した対応の徹底を図ること。

十四 一時保護時の司法審査の運用や実務の詳細を施行までに定める作業チームには、一時保護が子どもの権利や親権の行使等に対する制限であることを踏まえて、現に一時保護を経験した子ども又は親権者等及びその意見を正確に反映できる実務者も構成員に加えること。

十五 一時保護時の司法審査に対応するための児童相談所の人材確保と処遇改善を検討すること。

十六 国連児童の権利委員会の日本政府に対する総括所見が、親子分離は子及びその親の意見を聴取した後に行われるよう要請していることを踏まえて、裁判所が一時保護状を発するに当たっては、子ども及び親権者等の意見が裁判官に正確に伝わるよう適切な方策を講ずること。

十七 裁判所が一時保護状を発した場合、行政不服審査や行政訴訟の提起が可能であること等を理由に子ども又は親権者等の不服申立て手続を設けなかったことに鑑み、児童の権利に関する条約第九条第二項の趣旨を踏まえ、行政不服審査や行政訴訟の活用実態を把握し、次期児童福祉法改正時に必要な見直しを検討すること。

十八 新たな子ども家庭福祉分野の資格取得者の質の担保を図るほか、資格取得者の児童相談所、市町村、児童福祉施設等における配置が進み、地方自治体において実効性が上がるような方策を財政措置を含めて検討し、必要な措置を講ずること。

十九 子どもをわいせつ行為から守る環境整備について、保育所等では保育士資格を持たない者が保育補助として勤務している実態があることから、保育士に限らず、子どもに接する業務に携わる者全体を対象に対策を講ずることについて検討すること。また、万が一冤罪等であった場合には、身分回復を行う等の必要な対応を講ずること。

二十 アダルトビデオ出演被害の問題は重大な人権侵害であり、かつ、成年年齢引下げにより未成年者取消権行使ができないために高校生のアダルトビデオ出演が増えるような事態は、高校生や子どもへの性犯罪・性暴力を助長するなど児童福祉法の理念である「児童の健全育成」に反するものであることを踏まえ、アダルトビデオ出演被害の問題の解決に向けた取組を一層強化すること。

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