感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 本法施行までに相当の期間があることに鑑み、本法成立後、施行までの期間においても本法の趣旨を踏まえた感染症対策の全体的な取組の強化に努力し、当面する感染拡大に十二分に備えること。
二 保健所設置自治体が予防計画を作成するに当たり、市町村の意見を十分に聴き、市町村の役割を明確にし、保健所の負担軽減につながる方針を示すこと。
三 感染症危機時に確実に稼働する体制を構築するため、新型インフルエンザ等感染症等に係る医療提供体制確保等の協定が多くの医療機関との間で締結され、医療を必要とする者に確実に医療が提供されることとなるよう、地域における感染症医療提供体制整備に必要な支援を行うこと。
四 新型インフルエンザ等感染症等に係る医療提供体制確保等の協定の履行確保措置を講ずるに当たっては、地域の実情に応じた適切な運用となるようにするとともに、協定に基づき履行すべき内容と履行確保措置のバランス、地域医療への影響等に十分配慮すること。
五 流行初期医療確保措置が実施される期間について、保険者等の負担に鑑み、速やかな補助金、診療報酬の上乗せにより数か月程度の必要最小限の期間とすること。
六 新興感染症から国民の命を守るため、医療機関の協力が不可欠な状況に鑑み、平時からの備えに対する必要な支援を医療機関の経営面にも配慮し講ずること。
七 感染症危機に際しかかりつけ医等の地域の医療機関が可能な限り感染症医療を行うことができるよう、医薬品、個人防護具等の配布、治療方法の普及その他の必要な支援を行うこと。
八 感染症医療に対応する医療機関が、感染症患者と当該患者のかかりつけ医との関係を把握し、当該かかりつけ医等の地域の医療機関との連携を確保することができるような方策を検討し、速やかに必要な措置を講ずること。
九 地方衛生研究所について、本法の趣旨を踏まえ、法律上の位置付けを明確にしつつ、その体制整備等についての基本的な指針を地方公共団体に示すとともに、保健所及び地方衛生研究所の人員及び予算を確保し、試験及び検査、調査及び研究等のより一層の体制強化を図ること。
十 感染症対策及び予防接種事務に関するデジタル化及び情報基盤整備に当たっては、情報の流出の防止その他の国民のプライバシー情報の厳重管理を徹底すること。
十一 新型コロナウイルスの特性を考慮し、新型コロナワクチンの予防接種法上の扱いについて検討を行うこと。
十二 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に苦しむ患者について、治療と就労を両立するための支援を検討し、速やかに必要な措置を講ずること。
十三 新型コロナウイルスワクチン接種後の遷延する症状について、速やかに実態を把握し、病態の解明に必要な調査研究を行うこと。
十四 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状及び新型コロナウイルスワクチン接種後の遷延する症状について、患者がかかりつけ医等の地域の医療機関での治療を受けられるよう必要な措置を講ずるとともに、その症状並びにその診断及び治療の方法に関する情報を収集し、整理し、及び分析し、その結果に基づき必要な情報を適切な方法により積極的に公表すること。
十五 薬事承認制度が製薬企業からの申請に基づくものであることを踏まえ、製薬企業の研究開発支援、申請時の企業負担の軽減、治験等の手続の簡素化、企業相談の実施その他の製薬企業の薬事承認申請を促進する措置を講ずるとともに、緊急時における国主導による医薬品等の確保の仕組みを検討し、必要な措置を講ずること。
十六 今回の新型コロナウイルス感染症対応を踏まえ、かかりつけ医の役割、新型コロナ患者の健康観察を行う主体の在り方も含め、「ウィズコロナ」下におけるあるべき地域保健医療提供体制について引き続き議論を進めること。
十七 「ウィズコロナ」への移行を更に進める観点や教育的観点から、今一度、関係省庁とも連携して、国民がマスク着用の必要のない場面で、マスクを外す判断ができる環境づくりを進めること。
十八 現下の新型コロナウイルスの特性を踏まえ、科学的知見等に基づき適切なマスク着用の基準の見直しを検討するとともに、その結果をわかりやすく国民に伝えること。