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著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 

一 著作権制度は我が国の文化創造の基盤となる仕組みであり、デジタル化・ネットワーク化が進展する新しい時代においても、権利の保護を図りつつ、多様な著作物を多様な形態でより多くの国内外の利用者に届けていくことは極めて重要である。著作権制度の意義に鑑み、今後も権利の保護と著作物の円滑な利用の促進とのバランスを考慮し、本法により整備される権利制限規定等の適切な運用に十分配慮すること。

 

二 柔軟な権利制限規定の導入に当たっては、現行法において権利制限の対象として想定されていた行為については引き続き権利制限の対象とする立法趣旨を積極的に広報・周知するとともに、著作物の利用行為の適法性が不透明になり、かえって利用を萎縮する効果が生じることのないよう、ガイドラインの策定など、必要な対策を講ずること。

 

三 環境変化に対応した著作物利用の円滑化を図るという立法趣旨を踏まえ、現在想定し得ない新たな技術等で、著作物の軽微利用を行う必要があるものが開発等されたときは、第四十七条の五第一項第三号に掲げる政令について、幅広い学識経験者、権利者、インターネット事業者、開発者等の意見のバランスも考慮しつつ速やかに定めるよう努めること。また、当該政令により、かえって新たな技術の開発及び提供等が制限されることがないように留意すること。

 

四 本法により創設される「授業目的公衆送信補償金」について、教育現場での著作物の円滑かつ適法な利活用を促進する観点から、補償金額が妥当な水準に設定されることに加え、その確実な徴収と適正な配分の確保が担保されるよう必要な措置を講ずること。また、教育機関設置者が支払う補償金の負担が生徒等に転嫁される場合に、生徒等の負担が過度にならないよう、適切な運用に努めること。

 

五 プログラミング教育をはじめとする教育のデジタル化が積極的に進められている中で、デジタル教材の増加や授業目的公衆送信補償金の徴収事務により、教職員の負担が増加し、政府が目指す働き方改革に逆行することとならないよう、安価かつ操作しやすいデジタル教材の普及や授業目的公衆送信補償金の徴収事務の簡素化について、速やかに必要な措置を講ずること。また、同措置を講ずるに当たっては、教育の質の向上及び地域格差の解消といった点にも十分留意すること。

 

六 本法による改正後の著作権法第三十七条第三項に規定する視覚障害者等の読書の機会の充実を図るためには、本法と併せて、当該視覚障害者等のためのインターネット上も含めた図書館サービス等の提供体制の強化、アクセシブルな電子書籍の販売等の促進その他の環境整備も重要であることに鑑み、その推進の在り方について検討を加え、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。

 

七 本法により、美術品等の紹介・解説のために電子機器やインターネット上において権利者の許諾なく当該著作物の複製物を利用できることとなるが、電子機器等の特性を踏まえ、著作物の画像等が不適切に拡散されることがないよう、必要な対策を講ずること。

 

八 近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴う著作物等の利用形態の多様化及び著作権制度に係る動向等に鑑み、著作物等の利用の一層の円滑化に向けて、著作権法の適切な見直しを進めること。

特に、著作権制度の在り方をめぐり意見の相違が大きい重要課題については、国際的動向や関係団体・利用者等の意見を十分考慮するとともに、今後の急速な技術革新、著作物等の利用実態や社会の変化等への対応を踏まえた議論を進めること。

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