著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一 著作物等の利用に関する新たな裁定制度は、著作権等管理事業者による集中管理がされていない著作物等を対象としており、これらの権利者には個人で活動するクリエイターなどが多く含まれることを踏まえ、特に本制度の利用の契機となる著作物等の利用の可否に係る意思表示について、幅広く丁寧な説明、周知を行うこと。
二 新たな裁定制度の具体化に当たっては、現行の裁定制度の現状を踏まえ、手続の簡素化に留意し、制度の利用に繋がるよう努めること。また、権利者の意思表示の確認に係る要件について明確さを旨として定めるとともに、意思表示をしていない権利者の権利保護が図られるよう、裁定手続を進める過程においても、意思表示を待つだけに留まらず、不断に権利者の探索・アプローチを進める方策に努めること。
三 登録確認機関が行う未管理公表著作物等の使用料相当額の算出に当たっては、利用者の負担軽減の観点から、利用者が使用料相当額を算定しやすい簡便な仕組みとするとともに、著作物等の利用形態に応じた一般的な使用料等の相場を踏まえた適切な額とするよう努めること。
四 著作物等の利用に係る利便性の向上とともに、権利者への適切な対価還元を図る本法の趣旨を踏まえ、登録確認機関の登録及び指定補償金管理機関の指定に当たり、それぞれの機関が権利者及び利用者の意見を適切に反映した運営が確保されるよう留意すること。
五 分野横断権利情報検索システムは新たな裁定制度において権利者の探索に重要な役割を果たすことを踏まえ、政府は、分野横断権利情報検索システムの構築に当たって、著作権等管理事業者が保有する既存のデータベースとの連携等データベースの充実に向けた支援を行うこと。その際には、著作権等管理事業者の負担となることのないよう留意すること。
六 海賊版による著作権侵害に対する損害賠償額として認定されるライセンス料相当額の考慮要素の明確化については、侵害行為の抑止の観点から、損害賠償額が適正な額となるよう制度の趣旨の周知を図ること。
七 海賊版サイトについては、運営主体の多くが海外に拠点をもっていることから、その取締りに当たっては、日本国内のみならず国際的な連携・協力の強化など、海外での不正流通防止に向けた対策に積極的に取り組むこと。
八 メタバースや非代替性トークン(NFT)等、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が著作物等の創作・流通・利用を取り巻く環境に大きな影響を与えていることを踏まえ、著作物等の一層の利用の円滑化及びそれに伴う著作権者の権利保護の在り方等、著作権制度の議論を加速させること。
九 DXの進展により、著作物の創作又は利用を本来の職業としない者が著作物の提供者あるいは著作物の利用者となる機会が増えたことを踏まえ、著作権等に関する法律知識の周知や契約実務の補助となるマニュアル等の普及に努めること。
十 AI技術の進展により、他者の著作物を使用した創作物が容易に作成されるようになったことを踏まえ、著作者の権利の保護に向けた取組・体制の強化を図ること。また、著作権に対する意識の醸成及び教育機会の更なる充実を図ること。