新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。
一 新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議における「今後とも社会経済財政への影響、財源のあり方、施策の効果などについて多面的に検証が行われ、的確に政策が進められることを求めたい。」との指摘を踏まえ、新型コロナウイルス感染症に対する政府の対応について、飲食業、旅行業、宿泊業等に係る事業者の意見の聴取も含め、更なる検証を行った上で、その結果を公表するとともに、速やかに必要な措置を講ずること。特に予算に関しては、会計検査院の指摘も踏まえ、全体像の把握、使途の精査及び効果検証を行うこと。また、地方公共団体の財政措置をめぐる改正については、地方公共団体の意見を聴取し、国の財政措置の責任を単に地方公共団体に転嫁するものとならないよう、慎重に運用すること。
二 内閣官房及び内閣府の業務の肥大化を防止するため、事務及び組織について不断の見直しを行うこと。また、法律に基づく内閣官房及び内閣府への業務の追加は、平成二十七年一月二十七日の閣議決定「内閣官房及び内閣府の業務見直しについて」等を踏まえ、内閣の司令塔機能など本来の役割を十分発揮するために必要不可欠なものに限るとともに、原則として、あらかじめ当該業務を行う期限を設けること。
三 内閣感染症危機管理統括庁は、医療のみならず、行動経済学、データ分析、心理学、危機管理、広報、デジタルなど多様な専門的知見を活用できる体制を確保すること。
四 内閣感染症危機管理統括庁及び国立健康危機管理研究機構は、常時情報を共有するなど緊密な連携を確保すること。
五 内閣危機管理監については、内閣全体の危機管理という所掌事務の特殊性及び重要性に鑑み、感染症危機管理においても、その役割を十全に果たせるよう、運用上の役割を明確にすること。
六 内閣における危機管理に係る人材の育成に努めるとともに、危機管理人材育成に係る研修プログラムを充実させ、関係職員の資質向上を図ること。
七 感染症対応の初動期において、新型インフルエンザ等対策本部と各府省庁又は都道府県との間の調整が難航した場合には、内閣感染症危機管理統括庁は、新型インフルエンザ等対策本部長の指示権の行使については、慎重な検討に努め、あらかじめ各府省庁又は都道府県の意見を十分に聴き取り、当該意見を尊重しつつ総合調整に努めること。
八 感染を防止するための協力要請等に関し、都道府県知事が事業者等に命令する際に勘案すべき事項を定める政令については、当該都道府県知事による機動的かつ臨機応変な意思決定を阻害することのない内容とすること。
九 新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画(以下「政府行動計画」という。)の策定に当たっては、感染症対応に有用な情報を、平時から効率的・統合的に収集・管理するための情報基盤の整備と普及策について検討し、政府行動計画の中に盛り込むこと。
十 感染症対応の初動期において、より機動的かつ効果的に感染拡大を防ぐため、あらかじめ都道府県と協議の上、国の都道府県に対する財政支援の在り方を検討し、政府行動計画の中に盛り込むこと。
十一 起債の特例に関し、地方債の使途を定める総務省令については、未知の感染症の発生にも対応できるよう、感染症対策に係る最新の専門的知見を活かすため、不断の見直しを行うこと。