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   デジタル社会形成基本法案、デジタル庁設置法案、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案及び預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案に対する附帯決議

 

政府は、デジタル改革関連五法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。また、政府は、地方公共団体における運用等についても次の事項の趣旨にのっとり行われるよう、必要な助言を行うこと。

一 デジタル改革関連法案の要綱等に多数の誤りがあったこと及びその事実が判明した後、直ちに国会に報告しなかったことを深く反省し、再びこのようなことが起こらないよう、再発防止策を徹底すること。

二 デジタル社会形成基本法の施行に関し、以下の事項について配慮すること。

1 本法は国民に義務を負わせるものではないことに留意すること。また、事業者に課される努力義務は、事業者に過度な負担を課すことのないよう十分留意すること。

2 本法第十条の「デジタル社会」の形成に当たっては、高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用により個人の権利利益が害されることのないようにするとともに、高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保を図ること。

3 本法第二十九条は地方公共団体に「共同化及び集約」の義務を負わせるものではないことに留意すること。

4 地方自治に重要な影響を及ぼすと考えられる施策について重点計画を作成するときは、地方六団体のみならずその他の関係者の意見を幅広く聴取すること。

5 本法の運用に当たっては、デジタル化の推進が国民を監視するための思想信条、表現、プライバシー等に係る情報収集の手段として用いられることのないようにすること。

6 デジタル化の推進に当たっては、年齢や障がい、経済的状況、地理的条件等にかかわらず誰もが不自由なく行政とのやり取りを行える機会が得られるよう必要な措置を講ずるとともに、地方公共団体等の窓口における対面業務、電話対応等、従来の機能を求める国民のニーズに十分配慮すること。また、これらの条件にかかわらず誰もが不自由なく事業者のサービスを利用できるようにするため、事業者の責務として自ら必要な取組を行うよう促すこと。

7 地方公共団体のデジタル化を推進するに当たっては、各地方公共団体による独自の自治事務の遂行を妨げることのないようにすること。また、地方公共団体のシステムの共同化又は集約を行うに当たっては、適切な財源措置を講ずること。また、国が提供するシステム及び地方公共団体のシステムの改修作業が短期間に集中し、システム改修を行う事業者への過度な負担が生じないよう計画的に作業を推進すること。

8 国の行政機関、独立行政法人、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人等の行政機関等(個人情報の保護に関する法律第二条に定める行政機関等をいう。以下同じ。)が保有するデジタルデータについては、データの性質を踏まえつつ、その管理を外部に委託した場合を含め、データを国内に置くなど個人情報の保護に関する法律の趣旨にのっとり適切な管理を行うこと。

9 行政機関等が保有する情報のうち国民生活に有用なものについては、積極的にホームページ等で公表するなど国民が容易に活用できるようにするための環境整備について検討すること。

三 デジタル庁設置法の施行に関し、デジタル庁への民間からの人材確保に当たっては、特定企業との癒着を招くことがないよう配慮すること。併せて、今後継続的に民間から有能な人材が確保できるよう人事及び給与の面で適切な処遇を図ること。また、デジタル庁の体制の整備に当たっては、政府全体として行政の肥大化につながり行政改革に逆行することのないよう、十分留意すること。

四 デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の施行に関し、以下の事項について配慮すること。

1 個人の権利利益の保護を図るため、自己に関する情報の取扱いについて自ら決定できること、本人の意思に基づいて自己の個人データの移動を円滑に行うこと、個人データが個人の意図しない目的で利用される場合等に当該個人データの削除を求めること及び本人の同意なしに個人データを自動的に分析又は予測されないことの確保の在り方について検討を加え、必要な措置を講ずること。

2 地方公共団体が、その地域の特性に照らし必要な事項について、その機関又はその設立に係る地方独立行政法人が保有する個人情報の適正な取扱いに関して条例を制定する場合には、地方自治の本旨に基づき、最大限尊重すること。また、全国に適用されるべき事項については、個人情報保護法令の見直しを検討すること。

3 行政機関等が保有する個人情報の目的外での利用又は第三者への提供については、その要件である「相当の理由」及び「特別の理由」の認定を、厳格に行うこととし、行政機関等が行った判断の適否を、個人情報保護委員会が監視すること。

4 行政機関等が個人情報を利用する際、個人が自己の情報の利用状況を把握できる仕組みについて、情報通信技術の進展を踏まえた見直しを検討すること。

5 個人情報保護委員会による行政機関等の監視に当たっては、資料の提出及び実地調査を躊躇なく行うとともに、必要があれば勧告や報告の要求を遅滞なく行うことにより、監視の実効性を確保すること。

6 大量に個人情報を保有している事業者が我が国の個人情報に関する法令を遵守するよう徹底するとともに、必要な場合には立入検査、報告徴収等の権限を躊躇なく行使し、遵守状況について監視すること。

7 個人情報保護委員会が民間部門と公的部門における個人情報保護に関する業務を所掌することに鑑み、個人情報保護委員会の体制強化を図ること。

8 学術研究目的における個人情報の取扱いについては、個人の権利利益を不当に侵害する場合は個人情報の取扱いに係る制限の適用除外とならないことに鑑み、要配慮個人情報を含む個人情報の適正な取得や提供等の保護の取組を強化すること。

9 転職者等について事業者間で特定個人情報の提供を行う場合には、本人の同意を事実上強制することにならないよう、また転職者等が不利にならないよう、十分に配慮すること。

10 地方公共団体情報システム機構が署名利用者の最新の住所情報等を署名検証者に提供するための本人の同意については、同意後に事情変更があることも踏まえ、同意の取消しを可能とするとともに同意の有効期限を設けるなど、慎重な運用を行うこと。

11 地方公共団体情報システム機構において生成した署名利用者符号については、マイナンバーカードへの記録後に復元不可能な形で確実に廃棄されるよう、省令等において明記すること。

12 移動端末設備用電子証明書が記録されている移動端末設備の譲渡又は紛失等によって、電子証明書及び署名利用者符号等が悪用されることのないよう、国は、これらを迅速かつ確実に失効・削除する仕組みを整備するとともに、移動端末設備の買取り等を行う関係事業者に対して電子証明書が失効済であること並びに電子証明書及び署名利用者符号等が復元不可能な形で削除済であることを確認するよう要請するなど、万全の措置を講ずること。

13 地方公共団体情報システム機構において、情報システムに関する高度な専門的知識を有する人材の確保及び育成が円滑に図られるよう適切な支援を行うこと。また、同機構については、一層の情報公開を推進するなど、透明性の高い運営が行われるよう、必要な措置を講ずること。

14 契約において書面の交付に代わり電磁的記録を提供する場合においては、契約内容に係る電磁的記録を消費者が容易に保存できる手段を確保する等、適切な取組を事業者に促すこと。

五 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律の施行に関し、本法による預貯金口座の登録が、国民の資産把握のために用いられることがないようにすること。

六 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の施行に関し、以下の事項について配慮すること。

1 預貯金口座への個人番号の付番により個人資産が国により把握されることに対する国民の懸念があることに鑑み、税務調査等の法令に基づく調査以外で国が預貯金口座の利用状況を確認することがないようにすること。

2 預金保険機構が本法の規定により提供を受けた本人特定事項、個人番号、口座情報等については、その目的のための使用を終了した後は、直ちに復元不可能な形で削除することを預金保険機構に徹底すること。

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