海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。
一 国際基準にのっとった生物多様性の保全を重視し、利害関係者の意見を反映させるため、海外で導入事例のある海洋空間計画の実態を把握し、関係府省庁や環境専門家等との連携の下、我が国の実情を踏まえつつ、我が国独自の海洋空間計画の手法を早急に確立すること。
二 環境に十分に配慮した洋上風力発電事業を推進するため、事業者の協力を得ながら、環境影響評価図書の常時公開や事業開始後の適切なモニタリングの実施とその情報公開に向けた制度の見直しを検討すること。
三 公募占用計画等に記載される、事業者が海洋再生可能エネルギー発電設備設置や維持管理を通じて取得する情報について、目的外に利用することがないよう、事業者の情報管理体制について関係府省庁が適宜チェックすること。
四 事業者が洋上風力のサプライチェーン調査を行うことができるよう、他事例等を参考に、助言をする等のサポート体制を構築すること。
五 海洋環境等の保全の観点から環境省が行う調査が十分なものとなるよう、必要な予算と人員体制を確保すること。
六 募集区域の検討・指定や洋上風力発電の計画に関する情報が、その海域で漁を行う漁業関係者に速やかに伝わるよう、都道府県に対する情報提供を徹底すること。
七 募集区域の指定の段階において洋上風力発電が漁業や環境に及ぼす影響について、利害関係者の理解を十分に得た上で当該区域が指定されるよう、意見聴取、関係機関との協議等の在り方について検討し、必要な措置を講ずること。
八 促進区域の検討・指定に対し、各地で地域住民による反対運動が起きていることに鑑み、促進区域の検討に当たっては、府省庁横断的な組織の下で調整を進め、住民への情報提供を十分に行うとともに、住民の理解を得られるよう基礎自治体と緊密に連携し、合意形成プロセスを進めるよう徹底すること。また、大臣許可漁業団体や他県からの入会漁業者など地域と間接的に関連し得る関係漁業者が存在する実態に鑑み、案件形成に当たり、国が積極的に調整を図っていくこと。
九 洋上風力発電を始めとする我が国の再生可能エネルギーの発電コストは、火力発電などの既存のエネルギーと比較すると依然として高いことに鑑み、再生可能エネルギーの導入を進めるに当たっては、発電コストに係る国民負担の抑制を図るため、将来を見据えて電源別の発電コストの検証を随時行うこと。
十 再生可能エネルギーによる発電を促進するに当たっては、電力の安定供給のために既存のエネルギーによる発電の調整力が一定程度求められるものの、これに伴う社会全体でのコストの最小化が図られるよう努めること。
十一 再生可能エネルギー電源の送電線への接続が増加することを想定し、電力事業者等による送配電網の整備及びそれを支える人材の確保・育成について支援を行うこと。
十二 将来的に、遠方にある排他的経済水域(EEZ)に設置する上での課題が技術開発によって解決することを前提に、海洋再生可能エネルギー発電設備の全エネルギーを系統接続によらない手段により輸送できる制度を検討すること。