農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
我が国の食市場は、人口減少や高齢化を背景に今後縮小する一方で、世界の食市場の拡大が見込まれている。農林水産物・食品の輸出の拡大は、我が国農林水産業の生産基盤を維持・強化し、持続的な食料システムを構築するとともに、農山漁村の活性化を図るためにも重要である。これまでの産地、関係団体及び国一丸となった取組により、令和三年の輸出額は、一兆円に達したところである。しかしながら、輸出先国政府による食品安全、動植物検疫上の規制が輸出拡大の障害となる事例があることに加え、一部の国・地域が東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う輸入規制措置を依然として実施しているなど乗り越えるべき課題も残されている。また、新型コロナウイルス感染症、気候変動等に加え、ウクライナ情勢により食料及び生産資材の安定供給への世界的な影響が懸念されており、食料安全保障の確保が求められている。こうした状況を十分踏まえ、農林水産物・食品の輸出の促進に戦略的・計画的に取り組む必要がある。
よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 農林水産物・食品の輸出の促進に取り組むに当たり、農林漁業者をはじめとする関係事業者及び農村地域関連の所得向上が図られることが重要であり、これまでの輸出促進に係る諸施策の効果を検証し、効果的かつ効率的な施策を講ずること。その際、効果を正確に把握するための手法を速やかに検討すること。
二 農林水産物・食品の輸出をオールジャパンで推進していくため、農林水産物・食品輸出促進団体の運営基盤の強化に向けた支援を行うとともに、団体の適正な業務運営の確保及び団体間の連携の推進を図ること。
三 輸出拡大のために施設整備や海外現地法人の設立等に取り組む事業者や新たに輸出に取り組む事業者に対し、輸出事業計画の認定を通じて、補助、融資、税制面できめ細かな支援措置を実施すること。
四 高鮮度で付加価値の高い輸出物流の構築や輸出に係るコストの低減のため、輸出産地との密接な連携が可能となる地域の空港や港湾の活用など効率的なサプライチェーンの構築を促進すること。
五 農林水産物・食品の輸出に必要な輸出証明書の発行手続及び相談についてのワンストップサービスの充実を更に進め、輸出に取り組む事業者の負担軽減に取り組むこと。
六 輸出支援プラットフォームについては、在外公館や日本貿易振興機構海外事務所等の構成者間の連携を強化するとともに、現地事情に精通した人材を活用し、農林水産物・食品の輸出に取り組む関係事業者と海外バイヤー等との効果的なマッチングの実現に努めること。
七 原発事故に伴う輸入規制措置については、政府間交渉に必要な情報及び科学データの収集、分析等を十分に行い、諸外国・地域に正確な情報を提供し、あらゆる機会を捉えて輸入規制措置の撤廃を強く要請すること。また、動植物検疫に関し、輸出解禁に向けた協議を推進すること。
八 日本産農林水産物・食品のブランド力を維持・向上し、競争力を強化するため、GAP認証等、世界の食市場において通用する認証の取得を更に支援するとともに、JAS等の我が国発の規格の国際標準化に向けた取組を推進すること。また、地理的表示の相互保護を行う国・地域の拡大、種苗法に基づく登録品種の海外持出制限等の制度の厳格な運用及び海外での品種登録への支援など、農林水産物・食品に関する知的財産の戦略的な創出・保護・活用を図ること。
九 酒類を含む国産有機食品の海外での販路拡大に向けて、認証取得の負担を軽減するため、同等性の承認を得る国・地域の拡大に向けた交渉を推進すること。
十 現下の国際情勢を受けた原材料価格の高騰など、原材料の調達に不安定さが増している現況に鑑み、国産農産物の安定的な生産・供給に努め、加工食品における国産原材料の使用を推進するとともに、その消費拡大を図ること。
右決議する。