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   国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 我が国の国土面積の約二割、森林面積の約三割を占める国有林野は、重要な国民共通の財産であり、国土の保全、水源の涵養、林産物の供給等、広く国民全体の利益につながる多面的機能を有している。また、国有林野事業は、平成十年度の抜本的改革で「公益的機能の維持増進」を旨とする管理経営方針に大きく転換し、平成二十五年度には公益重視の管理経営を一層推進するとともに、一般会計で行う事業に移行している。昨今、頻発している自然災害への対応や、地球温暖化防止に対する国民の強い関心等も踏まえ、国有林野の有する公益的機能は、より一層十全に発揮されることが求められている。

 よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

                記

一 国民共通の財産である国有林野の管理経営は、国民の理解と協力を得ながら適切に行う必要があることを再認識し、今後とも、公益重視の管理経営を一層推進していくとともに、多様な機能の発揮に対する国民の期待に応えるため、引き続き、国が責任を持って一元的に行うこと。

二 樹木採取権の設定及び樹木採取区の指定に当たっては、地域における継続的・安定的な雇用の拡大、産業の発展及び所得水準の向上等の地域における産業の振興に対する寄与の程度を重視して行うとともに住民の福祉の向上に寄与する取組を妨げないよう配慮すること。その際、地域の中小規模の林業経営者等の育成整備につながるよう配慮するとともに、地域産業に悪影響を及ぼさないよう配慮すること。

三 樹木採取権実施契約に含むこととなる施業の計画は、国有林の公益的機能が維持増進されるよう、管理経営基本計画及び地域管理経営計画に適合したものとなるよう関係者に周知すること。

四 樹木採取区の指定に当たっては、地域の林業経営者等の育成整備に資する観点から、従来から国有林野事業が行っている立木販売事業や伐採請負事業はもとより、民有林の経営に悪影響を生じさせないようにすること。

五 樹木採取権の存続期間は、制度の適正かつ安定的な運用と地域の実情を踏まえた林業経営者等の育成を図るとともに、適時適切にその検証を行い、十年を基本とすること。

六 公益的機能の維持増進及び資源の循環利用の観点から、樹木採取権者と樹木採取権実施契約を締結する際には、樹木の採取と採取跡地における植栽を一体的に行わなければならないことを、契約書において明確化すること。また、採取跡地における植栽を適切に行うことのできる技術と能力を有する者を早急に育成するとともに、技術開発による機械化を促進すること。

七 林業の担い手の育成・確保のため、森林に関する知識の普及・啓発を行うとともに、新規就業者やその希望者に対する林業の技術及び経営に関する研修を充実強化すること。また、林業経営者の経営改善、労働安全衛生の強化をはじめとする就業環境改善に向けた対策の強化を図ること。

八 木材の安定供給、造林・保育・間伐等の施業の効率化、森林の有する多面的機能を持続的に発揮していくために必要不可欠な路網整備、鳥獣被害対策、立地条件等に応じた針広混交林化等の多様な森林づくりを推進するとともに、所要の予算を確保すること。

九 本法による措置が木材価格の下落につながることのないよう木材の需給動向を十分勘案し、万全の措置を講ずること。また、国産材の供給量の増加に見合った需要拡大のため、公共建築物等の木造化・木質化、輸出力の強化、CLT等の新製品・技術の開発・普及・新規需要の創出等を加速化し、川上から川下までの安定的、効率的な供給体制が構築されるよう必要な措置を講ずること。

十 公益重視の管理経営はもとより、地域の実情に即した林業経営の低コスト化等に向けた先駆的な技術の開発・普及と民有林との連携の更なる推進のため、森林管理局等の地方組織の職員の人材育成、適正配置など、国有林野事業の実施体制を強化すること。

右決議する。

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