福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
一 福島国際研究教育機構が先端技術を中核とした実用化重視の研究を行い、大胆な規制緩和や地域の研究施設、実証フィールドの活用を図りながら、機構発のベンチャー等を創出し、当該ベンチャー等と地域企業との連携を促進する仕組みを構築するとともに、インキュベーション施設の設置などによりベンチャー等を呼び込み、地域の雇用創出や取引拡大、定住人口の増大等の地域発展に寄与する拠点となるよう整備すること。
二 福島国際研究教育機構が分野横断的な研究及び産学官連携による新産業の創出、持続性のある人材育成等を推進する重要な拠点となり、福島イノベーション・コースト構想における創造的復興の中核拠点となるよう、復興庁の設置期限後も、政府は責任を持って、長期的かつ十分な予算、体制を確保すること。
三 我が国の科学技術力・産業競争力の強化を図るためには、福島国際研究教育機構の魅力ある取組を世界に発信し、世界レベルの研究者を呼び込むよう努めること。研究者等が最先端の研究を行いつつ安心して教育にも取り組めるような多言語対応にも配慮した住環境づくりの推進を図るため、研究者やその家族の受け入れに必要な生活環境・インフラ整備について、自治体と連携して取り組むための財源を確保すること。
四 福島国際研究教育機構を中核とした国際研究都市の形成のために必要不可欠なコンベンション施設など産学の活動を支援する施設、5Gなどの情報通信基盤、基幹となる広域的な交通インフラその他の周辺環境の整備については、政府が前面に立ち、自治体と連携して取り組むとともに、自治体や事業者等が行う周辺環境の整備等については、政府が全面的に支援すること。
五 原子力災害に見舞われた福島県の復興のためには、東京電力福島第一原子力発電所の着実かつ安全な廃炉が必要不可欠であり、政府は廃炉につながる福島国際研究教育機構の研究開発を支援すること。
六 ふくしま医療機器開発支援センター等地域の研究施設と連携した研究開発や地域課題の解決につながる研究開発を支援するなど、福島イノベーション・コースト構想の推進を加速すること。
七 福島国際研究教育機構の研究者等が安心して研究開発に取り組むことができるよう、研究者等本人の意向を踏まえ、可能な限り有期労働契約から無期労働契約へ移行させるよう努めること。また、我が国における科学技術の水準の長期的な向上を図るため、若手・女性研究者等に活躍の機会を与える環境を整備するよう努めること。
八 福島浜通り地域等が持続的な発展を遂げるには、復興をリードする地域の人材育成が重要であることから、地域の教育機関等との連携の下、地域の高専生や高校生を始め、小中学生も含めたシームレスな形での福島国際研究教育機構による地域人材に対する育成の仕組みを構築するなど、機構の教育機能を充実させること。
九 新産業創出等研究開発基本計画その他の本法で規定する目標、計画の策定等に当たっては、地域住民、企業、各種団体等の理解が得られるように、幅広い意見を聴取する機会を設け、その反映に努めること。
十 福島国際研究教育機構が各省庁の縦割りを超えた研究開発等を一元的に実施していくために、機構の理事長のリーダーシップ等により一体性を確保するとともに、理事長と緊密に連携しながら、復興庁が司令塔となり、共管省庁と連携していくこと。また、機構の見直しに当たっては、復興庁の設置期限の到来を見据え、縦割り行政の弊害に留意した検討を行うこと。
十一 福島国際研究教育機構の理事等役員には、大学・研究機関・企業の運営に高度な知識及び経験を有する者、科学技術の発達に関し特に功績顕著な科学者、福島の復興に関して優れた識見を有する者など卓越した人材を任命すること。
十二 新産業創出等研究開発協議会は、福島国際研究教育機構で行う研究開発や人材育成に関連する幅広い大学その他の研究機関を構成員とし、関係行政機関や地元地方公共団体等も含めて活発な協議を行い、機構の業務に積極的に関与すること。
十三 福島の復興・再生に向けて、福島国際研究教育機構の取組等を含め、県内外の避難者が真に安定した生活を取り戻すことができるまで、政府は支援を継続すること。
十四 福島国際研究教育機構は、研究開発や人材育成に関し、被災三県をはじめとする東北及び隣接する茨城県等の廃炉等の原子力関連研究施設やエネルギーに関係する大学・研究機関等とも密接な連携を取るよう努めること。
十五 福島国際研究教育機構と同様、福島県以外の被災地における雇用創出、定住人口の増大、新産業の創出、持続性のある人材育成、世界レベルの研究者の移住を推進するという見地から、国際リニアコライダー研究所の誘致を含め、世界最先端の国際研究都市の創造に向け、積極的な検討を行うこと。