森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切に措置すべきである。
一 森林環境譲与税の使途を適正かつ明確にしつつ、市町村が主体となった森林整備を促進するために、国は責任をもって、市町村の業務を支援していくこと。
二 市町村の体制強化に向けた支援策として、森林所有者の確定や境界の明確化、森林の巡視など、市町村の負担を軽減するため、更なる施策の拡充を図ること。
三 林業経営者の健全な育成を図るため、森林に関する高度の知識、技術、経営に関する研修計画を企画し、実施すること。また、林業経営者を評価するに当たっては、生産性(生産量)の基準だけでなく、作業の質、持続性、定着性、地域経済への貢献、労働安全条件などの評価基準も重視すること。
四 森林の育成には、林業労働力の確保・育成は不可欠であり、林業就業者の所得の向上、労働安全対策をはじめとする就業条件改善に向けた対策の強化を図ること。
五 市町村が、森林環境譲与税の使途を適正かつ明確にしつつ、これまでの森林施策では対応出来なかった奥地等の森林の整備等を円滑に実施することができるよう、市町村の林業部門担当職員の確保・育成を図る仕組みを確立するとともに、林業技術者等の活用の充実、必要な支援及び体制整備を図ること。
六 路網は、木材を安定的に供給し、森林の有する多面的機能を持続的に発揮していくために必要な造林、保育、間伐等の施業を効率的に行うために不可欠な生産基盤であることから、路網整備に対する支援を行うこと。
七 森林資源の循環利用を図るため、新たな木材需要を創出するとともに、これらの需要に対応した川上から川下までの安定的、効率的な供給体制を構築し、木材の利用拡大を図ること。
八 森林整備の推進に向けて、その大きな支障の一つである鳥獣被害に係る対策を含め、主伐後の植栽による再造林、保育が確実に実施されるよう、必要な支援を行うこと。
九 山村振興に向け、都市と山村自治体の連携強化を図るため、森林整備協定に基づく森林整備等を一層推進すること。
十 森林の有する公益的機能の維持増進の重要性に鑑み、森林環境譲与税による措置も含め、我が国全体で必要な森林整備が着実に進められるよう、所要の予算を確保すること。
十一 森林環境税を活用した森林整備等への国民の理解と協力が一層得られるよう努めること。
十二 私有人工林において、荒廃し、保水力低下、土砂災害の発生、野生鳥獣の生息地の破壊、花粉症り患者の急増など深刻な問題が生じていることが我が国の森林における重要な課題であることに鑑み、豊かな水源の森再生のために、森林環境譲与税で、地域の自然条件等に応じて放置人工林の広葉樹林化を進めること。
十三 広葉樹林化の施業は、実践例が乏しく、森林環境譲与税の交付を受ける自治体にその技術がなく、人材も不足していることから、森林環境譲与税で放置人工林の広葉樹林化が進むように、具体的な指針を示し、必要な支援を行うこと。
十四 既存の森林整備に係る補助金等は、放置人工林の広葉樹林化に利用が難しく、自治体独自の補助事業もほとんどないことに鑑み、放置人工林の広葉樹林化が各地で進むよう、必要な取組を行うこと。
十五 森林環境税及び森林環境譲与税制度について、各自治体における使途及び豊かな森林の公益的機能増進への効果を検証しつつ、必要がある場合には、豊かな森林環境の再生のために、森林環境譲与税の使途や譲与基準をはじめ、所要の見直しを行うこと。