地方自治法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法施行に当たり、次の事項について適切な措置を講じ、その運用に万全を期すべきである。
一 本法によって創設する国と普通地方公共団体との関係等の特例の対象となる「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」については、国と地方公共団体の認識や対応に違いが生じることのないよう、当該事態に該当するか否かを判断する考え方を可能な限り明確にし、速やかに地方公共団体に周知すること。
二 国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合においては、当該事態に適切かつ効果的に対処できるよう、デジタル技術の積極的な活用や、地方公共団体への情報収集及び連絡のための要員の派遣などによって、関係地方公共団体との迅速かつ円滑な情報共有・意思疎通に努めること。この際、地方公共団体に過度な負担とならないよう十分に配慮すること。
三 生命等の保護の措置に関する指示を行うに当たっては、状況に応じて、あらかじめ関係地方公共団体等との協議を行うなど、事前に関係地方公共団体等と十分に必要な調整を行うこと。
四 生命等の保護の措置に関する指示については、地方公共団体の自主性及び自立性に極力配慮し、個別法を制定又は改正するいとまがない場合であって、かつ、当該指示以外の措置では目的を達成することができないと認められる場合に限定してこれを行うようにすること。また、当該指示の内容は、目的を達成するために必要最小限のものとするとともに、地方公共団体の意見や地域の実情を適切に踏まえたものとすること。
五 生命等の保護の措置に関する指示を行った場合には、その旨及びその内容を速やかに国会に報告すること。また、当該指示について、同様の指示が再度行われることのないよう、地方公共団体等の関係者の意見を聴いた上で十分な事後検証を行い、その結果に基づいて、迅速に個別法の規定の整備に係る必要な法制上の措置を講ずること。
六 生命等の保護の措置に関する指示に基づき、地方公共団体が事務を処理する場合にあっては、これに要する経費の財源や必要な人材を適切に措置するなど、国が責任をもって当該地方公共団体を支援すること。
七 本法の規定に基づく応援や職員の派遣が行われる場合にあっては、これまでの災害時や感染症まん延時の事例も踏まえ、これに要する経費を負担する地方公共団体に対し、適切な財政措置等を講ずること。また、事態発生市町村等への応援や職員の派遣を適時適切に行うため、各地方公共団体における多様な職種の職員の充実を図ることや、都道府県・市町村の連携等による広域的な人材の確保及び活用の在り方について、必要な検討を行うこと。
八 国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に的確かつ迅速に対処するためには、その前提として、地方公共団体の規模・能力に応じ、適切に権限が配分されている必要があることに鑑み、都道府県から指定都市等への権限移譲を始め、更なる権限移譲を推進すること。
九 公金収納のデジタル化に伴う各地方公共団体のシステム改修については、国が必要な財源を確実に措置するとともに、既に地方公共団体情報システムの標準化等により、地方公共団体に大きな負担が生じていることに鑑み、過度な負担を強いることとならないよう留意すること。
十 指定地域共同活動団体制度の創設に当たっては、行政財産の貸付や随意契約による事務委託に関して、弾力的な運用を可能とする特例を設けることに鑑み、指定に係る団体の民主的で透明性の高い運営その他適正な運営を確保するため、事前及び事後チェックを適確に行えるよう、地方議会が一定の役割を担うことも含め、市町村に対して必要な助言を行うこと。
十一 指定地域共同活動団体としての指定の有無にかかわらず、地域住民が中心となって形成され、地域課題の解決に向けた取組を持続的に実践する団体に対し、市町村が十分な支援を行うことができるよう、引き続き、適切な財政措置を講ずること。