放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議
政府及び日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。
一 協会は、放送番組の編集に当たっては、受信料を財源とする公共放送の性格を定めた放送法の趣旨を十分踏まえ、事実に基づく放送に強い責任を自覚し、かつ政治的公平性を保つとともに、「人にやさしい放送」のさらなる拡充により放送のバリアフリー化を進め、我が国の公共放送としての社会的使命を果たすこと。また、寄せられる様々な意見に対し、必要に応じ自律的に調査し、その結果を速やかに公表し、国民・視聴者に開かれた公共放送として信任を得られるよう努めること。
二 政府は、日本国憲法で保障された表現の自由、放送法に定める放送の自律性に鑑み、協会を含めた放送事業者の番組編集について、引き続き自主・自律性を尊重すること。また、経営委員会委員の任命に当たっては、公正な判断をすることができる経験と見識を有する者から、教育、文化等の各分野及び全国各地方が公平に代表され、かつ、女性の比率を引き上げるなど多様な意見が反映されるよう幅広く選任するよう努めること。
三 協会は、その運営が受信料を財源としていることを踏まえ、国民・視聴者に対し、情報を十分に開示し、説明を尽くすこと。また、そのために、経営委員会及び理事会等における意思決定過程や、財政運営上の規律、不祥事に伴う処分、子会社等の運営の状況、調達に係る取引等を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、経営委員会及び理事会の議事録の適切な作成・管理を行うとともに原則としてこれを公表すること。
四 協会は、平成二十九年十二月の最高裁判決にも鑑み、公共放送の存在意義及び受信料制度に対する国民・視聴者の理解の促進や信頼感の醸成に協会一体となって、一層努めること。また、受信契約の締結に際しては、今後訪問によらない営業においても、関係者に対する影響等に留意するとともに、視聴者の理解を得ながら適正に行われるべきことを、職員に指導し、周知徹底すること。
五 協会は、放送センターの建替えに際し、受信料を財源としていることを踏まえ、中期経営計画で示された「新放送センターの建設計画の抜本的な見直し」の具体的な内容を早期に明らかにし、国民・視聴者の理解が得られるよう説明を尽くすとともに、建替えに係る費用の圧縮に徹底的に取り組み、その成果を国民・視聴者に適切に還元すること。
六 経営委員会は、放送法が定める協会の自律性を担保するために、協会の経営に関する重要事項を決定する権限と責任を有する最高意思決定機関であることを深く認識し、職務を遂行するに当たっては、放送法を遵守し、特に、何人からも介入されることのない個別の放送番組の編集への経営委員会の介入が疑われるような行為は厳に慎むこと。また、協会が放送法に定められた役割を的確に果たせるよう、監督権限を行使すること。
七 協会は、協会本体及びグループの職員による一連の不祥事に対し、国民・視聴者から厳しい批判が寄せられていることを踏まえ、協会一体となって綱紀を粛正しコンプライアンスを徹底した運営を行うことで、信頼回復に努めること。また、子会社を含むグループ全体としての経営改革に組織を挙げて迅速かつ確実に取り組むこと。
八 協会は、過去の記者が過労で亡くなった事実等を踏まえ、協会の業務に携わる者の命と健康を最優先とし、適正な業務運営と労働環境確保に努め、長時間労働による被害を二度と起こさないよう、全力で取り組むこと。また、ハラスメントの防止など職場の環境改善を進め、障害者の雇用率の向上及び女性の採用・登用の拡大を図ること。
九 協会は、放送と通信の大融合時代にふさわしい公共放送の在り方、受信料の在り方について、引き続き真剣に検討し、新しい社会と技術に対応した公共メディアとしての経営ビジョンを構築すること。
十 協会は、自然災害が相次いでいる現状に鑑み、地震災害、風水害、雪害等、いかなる災害時にも放送・サービスが継続され、正確な情報が国民に伝達されるよう、地方局と連携し、放送設備と体制の強化を図ること。
十一 協会は、インターネット常時同時配信等通信分野での業務について、社会実証の結果や民間放送事業者の見解に十分留意しつつ、国民・視聴者のニーズや動向を的確に把握し、国民・視聴者に対する情報提供や関係者間での情報共有及び連携を図り、協会における通信分野の業務の在り方について、できるだけ明確にその姿勢を示すよう努めること。
十二 協会は、国際放送については、我が国の経済・社会・文化等の動向を正しく伝え、我が国に対する理解を促進するよう努めること。また、世界情勢や感染症の現状に鑑み、在外邦人に対し、生命と身体の安全に関する情報を適切に伝えるよう努めること。