金融商品取引法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
一 金融経済教育の意義・目的には、金融リテラシー(金融に関する知識・判断力)の向上を通じて、国民一人一人が、経済的に自立し、より良い暮らしを実現していくことを可能とすることがあることに鑑み、以下の事項に留意した金融経済教育を推進すること。
1 金融商品取引を装った無登録営業、詐欺的な投資勧誘、脱法的なマルチ商法による被害が多数生じている現状を踏まえ、被害防止に必要な情報を適時適切に提供する仕組みを整えるとともに、批判的かつ多角的な判断力のかん養を支援すること。
2 投資の必要性又は有益性のみを強調するのではなく、リスクの正しい理解の浸透にも努め、個人のライフプランを踏まえた資産形成における自由な意思決定による貯蓄と投資の組合せを尊重すること。
二 金融経済教育推進機構の運営に当たっては、官僚の天下り先の確保や新たな資格認定を通じた利権の温床とならないよう人事情報や財務内容を積極的に開示するほか、以下の事項に留意すること。
1 金融経済教育推進機構の目的は、「適切な金融サービスの利用等に資する金融又は経済に関する知識を習得し、これを活用する能力の育成を図るための教授及び指導を推進すること」であって、本法による改正後の金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律第八十二条第一項に基づく基本方針の内容に完全に含まれるものではないこと。
2 1の「適切な金融サービスの利用等に資する金融又は経済に関する知識」には、資産形成だけではなく、金融広報中央委員会が従来扱ってきた家計管理・生活設計や消費者被害防止等も含まれ、その知識を習得し、「これを活用する能力の育成を図るための教授及び指導」は、金融経済教育推進会議作成の金融リテラシー・マップを基本としたものを通じて行われるものであること。
3 政府・金融経済教育推進機構は、これまで金融広報中央委員会が実施してきた学校教育に向けた金融教育プログラムをはじめとした、金融教育教材作成、教員向けセミナー、作文・小論文コンクール等の活動、及び経年的に行ってきた「家計の金融行動に関する世論調査」や「金融リテラシー調査」等の基礎的な調査・報告等の意義・成果を踏まえながら、活動内容を充実させるとともに、金融経済教育が広く国民に提供されるよう取り組むこと。
三 金融経済教育推進機構に対して国が行う監督の実効性を確保するため、及び、地方公共団体や民間事業者の取組に対する支援を全国において着実に実施するために必要な体制を整備すること。
四 金融サービスの提供に当たり、「顧客等の最善の利益」を図るための取組が徹底されること。
五 本法附則第六十九条の検討条項に関して、改正後の各法律の施行の状況等を勘案するに当たっては、金融サービスの顧客等の利便が向上し、かつ当該顧客等が保護されているかを十分に検証し、必要があると認めるときは、各法律に基づく制度の改善につなげるための検討を行うこと。