保険業法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
一 今般の保険金不正請求事案及び保険料調整行為事案の再発防止策が、本法による措置及び下位法令への委任のほか、顧客本位ではない比較推奨販売の禁止、代理店への過度な便宜供与の禁止及び企業内代理店規制の見直しなどの監督指針等による対応を含む多面的な構造となっていることに鑑み、当局のモニタリングを総合的に行う態勢を確立するほか、業界における顧客本位の業務運営の徹底をさらに促すことなどにより、当該再発防止策の実効性を担保すること。
二 保険業界の不祥事への対応に当たって、必要十分な検査及び処分等が円滑に実施されるよう、金融庁及び財務局において必要な機構・定員を確保し、保険契約者等の保護を図ると共に、保険業に対する信頼性の確保及びその健全な発展に万全を期すこと。
三 今般の保険料調整行為事案の一因が、近年の自然災害の頻発・激甚化が火災保険金の支払いを増加させる一方、契約期間が長期であるなどの理由から保険料への反映が遅れることで、火災保険の危険差益を悪化させたことにあったことを踏まえ、このような火災保険の構造的な問題への対処のため、当該構造に係る分析を行い、持続可能なビジネスモデルの構築を損害保険業界に促すこと。
四 三の火災保険の危険差益の悪化への対応として、他の保険種別における収益移転が過度に起きることのないよう、保険商品の認可においては、保険商品の契約者間の公平性が確保されるような保険商品の認可に努めること。
五 保険会社等の金融機関に対しては、法令やガイドライン等により、個人情報保護法よりも厳格に個人情報を管理することが求められていることに鑑み、昨今多発している、保険代理店における個人情報漏えい事案に対し、その再発防止に向けた、より一層の厳格な対応を行うこと。
六 本法の基礎となる「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」及び「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」の取りまとめ後においても、保険業界においては不適切な行為が表面化し当局が立入検査を実施していることに鑑み、改めてこれを業界の問題として捉え、業界全体の実態解明に努めると共に、その結果を公表すること。
七 六の実態解明による問題への対処が本法による措置では不十分と判断される場合においては、附則第四条の検討規定に定める本法の施行後五年を目途とする時期を待つことなく、直ちに検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。