刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)の概要
本案は、刑事施設における受刑者の処遇及び執行猶予制度等のより一層の充実を図るため、懲役及び禁錮を廃止して拘禁刑を創設し、その処遇内容等を定めるとともに、執行猶予の言渡しをすることができる対象者の拡大等の措置を講じ、並びに罪を犯した者に対する刑事施設等の施設内及び社会内における処遇の充実を図るための規定の整備を行うほか、近年における公然と人を侮辱する犯罪の実情等に鑑み、侮辱罪の法定刑を引き上げようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 罪を犯した者の施設内・社会内処遇のより一層の充実
1 懲役及び禁錮を廃止し、これらに代わるものとして、拘禁刑を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置し、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができることとすること。
2 執行猶予制度の拡充
㈠ 再度の刑の全部の執行猶予の言渡しが可能な宣告刑の上限を一年から二年に引き上げるなど、対象者の範囲を拡大すること。
㈡ 刑の執行猶予の期間内に更に犯した罪について公訴の提起がなされている場合には、当該罪についての有罪判決の確定が猶予の期間の経過後となったときにおいても、猶予された当初の刑を執行することができることとすること。
3 施設内・社会内処遇に関する規定の整備
㈠ 受刑者ごとに定めるものとされている処遇要領は、できる限り速やかに、矯正処遇の目標並びに作業・指導ごとの内容及び方法をできる限り具体的に記載して定めることとすること。
㈡ 再び保護観察付執行猶予を言い渡された者について、少年鑑別所による鑑別を行うなどして再犯の要因を的確に把握し保護観察を実施することとすること。
㈢ 受刑者・保護観察対象者等について、刑事施設の長等による被害者等から聴取した心情等を踏まえた指導等に関する規定を整備すること。
二 侮辱罪の法定刑の引上げ
侮辱罪の法定刑を「拘留又は科料」から「一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げること。
三 施行期日
この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、二は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行すること。