民法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六三号)要旨
本案は、制定以来、約百二十年間の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする観点から、消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備、法定利率を変動させる規定の新設、保証人の保護を図るための保証債務に関する規定の整備、定型約款に関する規定の新設等を行おうとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 消滅時効
医師の診療に関する債権は三年、飲食店の飲食料に係る債権は一年などとされている短期消滅時効の特例をいずれも廃止し、消滅時効の期間の統一化を図るなど、時効に関する規定を整備するものとすること。
二 法定利率
現行の年五パーセントから年三パーセントに引き下げた上、市中の金利動向に合わせて変動する制度を導入するものとすること。
三 保証債務
事業用融資の債務の保証契約において、保証人になろうとする者が個人である場合(主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役等である場合などを除く。)には、公証人が保証意思を確認しなければ効力を生じないものとするなど、保証人の保護を図るための保証債務に関する規定を整備するものとすること。
四 定型約款
定型約款によって契約の内容が補充されるための要件のほか、定型約款を準備した者が取引の相手方の同意を得ることなく定型約款の内容を一方的に変更するための要件等、不特定多数の者を相手方とする定型的な取引に使用される定型約款に関する規定を新設するものとすること。
五 その他
意思能力を有しなかった当事者がした法律行為は無効とすること、将来債権の譲渡が可能であること、賃貸借契約の終了時に賃借人は賃借物の原状回復義務を負うものの、通常の使用収益によって生じた損耗等についてはその義務の範囲から除かれることなど、確立した判例法理等を明文化するものとすること。
六 施行期日
この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。