情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)概要
本案は、近年における情報通信技術の進展及び普及の状況等に鑑み、刑事手続等の円滑化・迅速化及びこれに関与する国民の負担軽減を図るため、手続において取り扱う書類について電磁的記録をもって作成・管理・発受することを可能にするとともに、対面で行われる手続についてビデオリンク方式の一層の活用を可能にするための規定の整備を行うほか、情報通信技術の進展等に伴う犯罪事象に適切に対処するため、電磁的記録をもって作成される文書に対する信頼を害する行為等についての処罰規定の整備、犯罪収益の新たな没収の裁判の執行等の手続の整備等を行おうとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 刑事手続等の円滑化・迅速化及びこれに関与する国民の負担軽減を図るための規定の整備
1 電磁的記録をもって書類の作成等をすることを可能にするための規定の整備
㈠ 電磁的記録である証拠の閲覧・謄写の方法を定めること。
㈡ 裁判所に対する申立て等について、電子情報処理組織を使用する方法等によることを可能にすること。
㈢ 令状について、電磁的記録による発付・執行を可能にすること。
㈣ 記録命令付差押えを廃止して、電磁的記録提供命令を創設すること。
2 ビデオリンク方式の一層の活用を可能にするための規定の整備
㈠ 勾留質問及び検察官による弁解録取について、被疑者等を刑事施設に在席させてビデオリンク方式により行う場合の手続等を定めること。
㈡ 公判期日における手続について、被告人等を公判廷以外の場所に在席させてビデオリンク方式により行うことを可能にすること。
㈢ ビデオリンク方式により証人尋問等を実施することができる範囲を拡充すること。
二 情報通信技術の進展等に伴う犯罪事象に適切に対処するための規定の整備
1 行使の目的で電磁的記録文書等を偽造する行為等について処罰規定を整備すること。
2 公務員が職務を執行するに当たり、その職務に使用する電子計算機等を損壊するなどの方法により、その電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせない行為等について処罰規定を整備すること。
3 電子情報処理組織を用いて移転する新たな形態の財産について没収の裁判の執行及び没収保全の手続を整備すること。
4 犯罪捜査のための通信傍受の対象犯罪に財産上の利益を客体とする強盗罪等を追加すること。
三 この法律は、原則として、令和九年三月三十一日までの間において政令で定める日から施行すること。