民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)の概要
本案は、子の権利利益を保護する観点から、子の養育についての父母の責務に関する規定の新設、父母が離婚した場合にその双方を親権者と定めることができるようにする等の親権に関する規定の整備、子の監護に要する費用の支払を確保するための制度の拡充、家事審判等の手続における父又は母と子との交流の試行に関する規定の新設等の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 民法の一部改正
1 父母が子を養育するに当たって遵守すべき責務を定める規定を設けること。
2 父母が離婚した場合にその双方を親権者と定めることができるようにする旨の規定を設けるとともに、父母の双方が親権者であるときの親権の行使方法に関する規定や、父母の一方から双方及び双方から一方への親権者の変更についての規定、監護者や監護の分担に関する規定を整備すること。
3 養育費等の債権に一般先取特権を付与するとともに、父母が養育費の額を定めることなく離婚をした場合においても父母の一方が他の一方に対して所定の額の養育費の支払を請求することができる旨の規定を設けること。
4 婚姻中の父母が別居する場面における親子交流に関する規定を明確化するとともに、父母以外の親族が家庭裁判所に対して子との交流に関する処分の審判を申し立てるための要件を定める旨の規定を設けること。
5 養子縁組がされた場合の親権者に関する規定を整備すること。
6 財産の分与の請求をすることができる期間を五年に伸長するとともに、財産の分与の請求において家庭裁判所が考慮すべき要素を具体化する規定を設けること。
二 民事執行法の一部改正
養育費等の債権に基づく民事執行について、一回の申立てにより、債務者財産の開示に関する手続とその手続において開示された財産に対する強制執行を連続的に行うことができる旨の規定を設けること。
三 人事訴訟法の一部改正及び家事事件手続法の一部改正
人事訴訟、家事審判及び家事調停の手続において、裁判所が当事者に対し収入や財産に関する情報開示を命ずるための規定及び親子交流の試行的実施を促すための規定を設けること。
四 施行期日
この法律は、原則として、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。