刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)(参議院送付)の概要
本案は、近年、犯罪者の再犯防止が重要な課題となっていることに鑑み、犯罪者が再び犯罪をすることを防ぐため、刑法を改正して、刑の一部の執行を猶予することを可能とする制度を導入するとともに、更生保護法を改正して、地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を行うことを保護観察の特別遵守事項に加えるなど、所要の法整備を行おうとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 刑法の一部改正
1 刑の一部の執行猶予制度の導入
刑務所に服役したことがない者、あるいは刑務所に服役したことがあっても出所後五年以上経過した者が三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合に、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができるものとすること。
2 刑の一部の執行猶予中の保護観察
刑の一部の執行猶予が言い渡された場合においては、猶予の期間中保護観察に付することができるものとすること。
二 更生保護法の一部改正
1 特別遵守事項の一部改正
保護観察の特別遵守事項の類型に、「善良な社会の一員としての意識の涵養及び規範意識の向上に資する地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を一定の時間行うこと。」を加えること。
2 規制薬物等に対する依存がある保護観察対象者に関する特則の新設
㈠ 規制薬物等に対する依存がある保護観察対象者に対する保護観察は、その改善更生を図るためその依存を改善することが重要であることに鑑み、これに資する医療又は援助を行う病院、公共の衛生福祉に関する機関その他の者との緊密な連携を確保しつつ実施しなければならないものとすること。
(二) 規制薬物等に対する依存があると認められる保護観察対象者に対しては、保護観察における指導監督として、規制薬物等に対する依存の改善に資する医療を受けること及び規制薬物等に対する依存の改善のための専門的な援助を受けることについて、必要な指示その他の措置をとることができるものとすること。
三 施行期日
この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。