刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)の概要
本案は、近年における性犯罪をめぐる状況に鑑み、この種の犯罪に適切に対処するため、強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪並びに強制性交等罪及び準強制性交等罪をそれぞれ統合した上で、それらの要件を整理して不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪とするなどの要件の改正その他の処罰規定の整備を行い、あわせて、性犯罪について公訴時効期間を延長するほか、被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則を新設しようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 刑法の一部改正
1 強制わいせつ罪、強制性交等罪等の要件の改正
㈠ 強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪並びに強制性交等罪及び準強制性交等罪をそれぞれ統合した上で、それらの要件を「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という文言を用いて整理し、不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪とすること。
㈡ 十三歳以上十六歳未満の者に対し、当該者より五歳以上年長の者がわいせつな行為又は性交等をしたときは、不同意わいせつ罪又は不同意性交等罪として処罰することとすること。
㈢ 膣(ちつ)又は肛(こう)門に陰茎以外の身体の一部又は物を挿入する行為であってわいせつなものを性交等に含めること。
2 十六歳未満の者に対する面会要求等の罪の新設
わいせつの目的で、十六歳未満の者に対し、威迫、偽計、利益供与等の手段を用いて面会を要求する行為等について、罰則を新設すること。
二 刑事訴訟法の一部改正
1 性犯罪についての公訴時効期間の延長
性犯罪について、公訴時効期間を五年延長するとともに、被害者が十八歳未満である場合には、その者が十八歳に達するまでの期間に相当する期間、更に公訴時効期間を延長すること。
2 被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則の新設
被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体について、一定の要件の下で、主尋問に代えて証拠とすることができることとすること。
三 施行期日
この法律は、原則として、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行すること。