民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)の概要
本案は、子の権利利益を保護する観点から、嫡出の推定が及ぶ範囲の見直し及びこれに伴う女性に係る再婚禁止期間の廃止等の措置を講ずるとともに、親権者の懲戒権に係る規定を削除し、子の監護及び教育において子の人格を尊重する義務を定める等の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 民法の一部改正
1 女性が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものは夫の子と推定する旨の規定を設けるとともに、子を懐胎した時から子の出生の時までの間に複数の婚姻をしていたときは、子の出生の直近の婚姻における夫の子と推定する旨の規定を設けること。
2 女性に係る再婚禁止期間に関する規定を削除すること。
3 父による嫡出否認の訴えの出訴期間を父が子の出生を知った時から三年に伸長するとともに、嫡出推定の否認権者を子及び母に拡大し、母の前夫の否認権を新設等すること。
4 事実に反する認知について、争うことができる期間等に関する規定を設けること。
5 親権者の懲戒権に関する規定を削除するとともに、子に対する監護及び教育における子の人格を尊重する義務や体罰等の禁止等に関する規定を設けること。
二 国籍法の一部改正
事実に反する認知によっては日本国籍を取得できないものとする規定を設けること。
三 人事訴訟法及び家事事件手続法の一部改正
子の出生の直近の婚姻の夫の子との推定が否認された場合等に裁判所が判決又は審判の内容を前夫に通知する旨の規定等を設けること。
四 生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律の一部改正
一の3の見直しに伴い、第三者の精子を用いた生殖補助医療により出生した子について、妻及び子の嫡出否認権を制限する規定を設けること。
五 児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部改正
親権者や児童相談所長等が児童に対して行う監護、教育及び懲戒に関する必要な措置について、一の5と同様の見直しを行う規定を設けること。
六 施行期日
この法律は、原則として、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。