二酸化炭素の貯留事業に関する法律案(内閣提出第一七号)概要
本案は、二酸化炭素の貯留事業の健全な発達等を図るとともに、公共の安全を確保するため、二酸化炭素の貯留事業に係る許可制度及び貯留権の創設、貯留事業における保安の確保のために必要な措置の義務付け、二酸化炭素が貯蔵された事業場の長期的な管理のための制度の整備、導管輸送事業に係る届出制度の創設等の措置を講ずるものであり、その主な内容は次のとおりである。
一 貯留事業・試掘の許可制度の創設
経済産業大臣が、二酸化炭素を安定的に貯留できる貯留層が存在する可能性がある区域を「特定区域」と指定した上で、「特定区域」において、貯留事業や試掘を行おうとする事業者を募集し、これらを最も適切に行うことができると認められる者に対して、許可を与えること。
また、経済産業大臣は、許可を受けた者に対して、貯留層に二酸化炭素を貯留する権利として「貯留権」を、試掘を行う権利として「試掘権」を「みなし物権」として設定し、第三者に対して妨害排除請求を行うこと等を可能とすること。
二 貯留事業・試掘に関する事業規制・保安規制の整備
貯留事業の具体的な実施計画については主務大臣の、試掘の具体的な実施計画については経済産業大臣の認可制とした上で、貯留事業者及び試掘者に対しては、技術基準への適合義務等の保安規制を課すこと。
また、貯留事業者に対しては、二酸化炭素の漏えい等が発生していないかどうかを確認するため、貯留層における温度、圧力等のモニタリング義務を課すほか、正当な理由なく、特定の二酸化炭素排出者を差別的に取り扱うこと等を禁止するとともに、料金等の届出義務を課すこと。さらに、二酸化炭素の貯蔵状況が安定している等の一定の要件を満たす場合には、経済産業大臣の許可を受けて、貯留事業場の管理業務を独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構に移管することを可能とすること。
三 導管輸送事業に関する事業規制・保安規制の整備
貯留層に二酸化炭素を貯蔵することを目的として、二酸化炭素を導管で輸送する導管輸送事業を行おうとする者は、経済産業大臣に届け出なければならないとした上で、正当な理由なく、特定の二酸化炭素排出者を差別的に取り扱うこと等を禁止するとともに、料金等の届出義務を課すこと。
また、導管輸送事業における安全を確保するため、導管輸送事業者に対しても、技術基準への適合義務等の保安規制を課すこと。
四 施行期日
この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。