船舶油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)の概要
本案は、二千一年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(以下「燃料油条約」という。)及び二千七年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約(以下「難破物除去条約」という。)の締結に伴い、船舶の燃料油の流出又は排出による汚染等により生ずる損害及び難破物の除去等に要する費用の負担により生ずる損害に関し、これらの損害の被害者の保護を図るため、保障契約の締結を義務付ける船舶の範囲の拡大、保険者等に対する被害者の直接請求に関する規定の整備等の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 法律の題名を「船舶油濁等損害賠償保障法」に改めること。
二 法律の目的を、船舶油濁等損害(タンカー油濁損害、一般船舶等油濁損害及び難破物除去損害をいう。)が生じた場合における船舶所有者等の責任を明確にし、及び船舶油濁等損害の賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて海上輸送の健全な発達に資することとすること。
三 一般船舶等油濁損害賠償責任及び責任の制限並びに難破物除去損害賠償責任
1 一般船舶等油濁損害が生じたときは、船舶所有者等は、連帯してその損害を賠償する責任を負い、難破物除去損害が生じたときは、船舶所有者は、その損害を賠償する責任を負うこと。
2 燃料油条約の規定により管轄権を有する外国裁判所が一般船舶等油濁損害の賠償の請求の訴えについてした確定判決は、その効力を有すること。
3 一般船舶等油濁損害の賠償の責任を負う船舶所有者等の責任の制限については、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の定めるところによること。
四 一般船舶等油濁損害賠償保障契約及び難破物除去損害賠償保障契約等
1 一般船舶等油濁損害賠償保障契約及び難破物除去損害賠償保障契約の締結が義務付けられる船舶の範囲を拡大するとともに、難破物除去損害賠償保障契約が必要となる船舶の範囲を定めること。
2 一般船舶等油濁損害の被害者又は難破物除去損害の被害者は、当該賠償責任を有する者と保障契約を締結する保険者等に対し、損害賠償額の支払を請求することができること。
3 国土交通大臣は、一般船舶等油濁損害賠償保障契約又は難破物除去損害賠償保障契約の締結をしている者の申請があったときは、保障契約証明書を交付しなければならないこと。
4 タンカー又は一般船舶が、航海又は我が国の港への入出港等を行うに当たっては、保障契約証明書を船内に備え置かなければならないこと。
五 この法律は、一部の規定を除き、燃料油条約及び難破物除去条約が日本国について効力を生ずる日から施行すること。