社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第59号)概要
本案は、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成等の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配機能の強化や私的年金制度の拡充等により高齢期における生活の安定を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 短時間労働者の被用者保険の適用要件のうち、賃金要件を撤廃するとともに、企業規模要件について、現行の従業員五十人超から、令和九年十月一日に三十五人超、令和十一年十月一日に二十人超、令和十四年十月一日に十人超へと段階的に縮小し、令和十七年十月一日に撤廃すること。
二 常時五人以上を使用する個人事業所の非適用業種を解消し、被用者保険の適用事業所とすること。ただし、既存事業所については、経過措置として当分の間適用しないものとすること。
三 被用者保険の適用拡大に伴い、労使折半が原則である保険料負担割合を変更することで労働者の保険料負担を軽減できることとし、労使折半を超えて事業主が負担した保険料を制度的に支援すること。
四 在職老齢年金制度の支給停止となる収入基準額を五十万円(令和六年度価格)から六十二万円に引き上げること。
五 遺族厚生年金を受けることができる遺族について、十八歳未満の子のない二十歳代から五十歳代までの配偶者を原則五年の有期給付の対象とし、六十歳未満の男性を新たに支給対象とすること。また、これに伴う配慮措置として、五年経過後の継続給付、死亡分割制度及び有期給付加算の新設、収入要件の廃止等を行うこと。
六 子に対する遺族基礎年金について、生計を同じくするその子の父又は母があるときにその支給を停止する規定を削除すること。
七 厚生年金保険等の標準報酬月額の上限額について、六十五万円から七十五万円に段階的に引き上げるとともに、最高等級の者が被保険者全体に占める割合に基づき改定できるものとすること。
八 私的年金制度について、個人型確定拠出年金の加入可能年齢の上限を七十歳未満に引き上げるとともに、厚生労働省が企業年金の運営状況の報告書の記載事項のうち一定の事項を公開するものとすること。
九 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律附則による公的年金制度の所得再分配機能等の検討を引き続き行うに際して社会経済情勢の変化を見極めるため、次期財政検証の翌年度(令和十二年度を予定)まで厚生年金(報酬比例部分)のマクロ経済スライドによる給付調整を継続すること。この場合、この間の厚生年金の調整率を三分の一に軽減すること。
十 この法律は、一部の規定を除き、令和八年四月一日から施行すること。