著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)概要
本案は、著作物等の公正な利用を図るとともに著作権等の適切な保護に資するため、著作物等の利用の可否に係る著作権者等の意思が確認できない場合の著作物等の利用に関する裁定制度を創設する等の措置、立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合等に著作物等の公衆送信等を可能とする措置及び著作権等の侵害に対する損害賠償額の算定の合理化を図る措置を講ずるものであり、その主な内容は次のとおりである。
一 著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等
1 集中管理がされておらず、利用の可否に係る著作権者等の意思を円滑に確認できる情報が公表されていない著作物等を利用しようとする者は、著作権者等の意思を確認するための措置をとったにもかかわらず、確認ができない場合には、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することにより、裁定において定める期間に限り、当該著作物等を利用することができることとすること。
2 文化庁長官は、裁定に係る著作物の著作権者等からの請求により、当該裁定を取り消すことで、取消し後は本制度による利用ができないこととし、著作権者等は補償金を受け取ることができることとすること。
3 迅速な著作物等利用を可能とするため、新たな裁定制度の申請受付、要件確認及び補償金の額の決定に関する事務の一部について、文化庁長官の登録を受けた窓口組織が行うことができることとすること。
二 立法又は行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置
1 立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、必要な限度において、内部資料の利用者間に限って著作物等を公衆送信等できることとすること。
2 特許審査等の行政手続等について、デジタル化に対応し、必要と認められる限度において、著作物等を公衆送信等できることとすること。
三 海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し
1 著作権等の侵害者の売上げ等の数量が、権利者の販売等の能力を超える場合等であっても、ライセンス機会喪失による逸失利益の損害額の認定を可能とすること。
2 損害額として認定されるライセンス料相当額の算定に当たり、著作権侵害があったことを前提に交渉した場合に決まるであろう額を考慮できる旨を明記すること。
四 施行期日
この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、二及び三については令和六年一月一日から施行すること。