公益通報者保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)概要
本案は、近年の事業者の公益通報への対応状況及び公益通報者の保護を巡る国内外の動向に鑑み、事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上、公益通報者の範囲拡大、公益通報を阻害する要因への対処及び公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化を講じようとするものであり、その主な内容は次のとおりである。
一 事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上
1 公益通報対応業務の従事者指定義務に違反する事業者に対し、現行法の指導・助言、勧告権限に加え、勧告に従わない場合の命令権及び命令違反時の刑事罰を新設すること。また、事業者に対する現行法の報告徴収権限に加え、立入検査権限を新設するとともに、報告懈怠、検査拒否等に対する刑事罰を新設すること。
2 現行法の体制整備義務の例示として、労働者等に対する事業者の公益通報対応体制の周知義務を明示すること。
二 公益通報者の範囲拡大
公益通報者の範囲に、事業者と業務委託関係にあるフリーランスを追加し、公益通報を理由とする業務委託契約の解除その他不利益な取扱いを禁止すること。
三 公益通報を阻害する要因への対処
1 事業者が、労働者等に対し、正当な理由がなく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めること等によって公益通報を妨げる行為をすることを禁止し、これに違反してされた合意等の法律行為を無効とすること。
2 事業者が、正当な理由がなく、公益通報者を特定することを目的とする行為をすることを禁止すること。
四 公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化
1 公益通報後一年以内の解雇又は懲戒は公益通報を理由としてされたものと推定すること。
2 公益通報を理由として解雇又は懲戒をした者に対し、直罰を新設すること。
3 公益通報を理由とする一般職の国家公務員等に対する不利益な取扱いを禁止し、これに違反して分限免職又は懲戒処分をした者に対し、直罰を新設すること。
五 施行期日
この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。
同法律案委員会修正要旨
検討規定について、検討の目途を「施行後五年」から「施行後三年」とすること。