令和六年度畜産物価格等に関する件
よって政府は、こうした情勢を踏まえ、令和六年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一
加工原料乳生産者補給金については、飼料等の資材価格の高騰等により酪農経営が危機的な状況であることを踏まえ、中小・家族経営を含む酪農経営が再生産可能なものとなるよう単価を決定すること。集送乳調整金については、物流の二〇二四年問題を始めとする輸送環境の悪化を踏まえ、条件不利地域を含めて確実にあまねく集乳を行えるよう単価を決定すること。総交付対象数量については、乳製品向け生乳消費量を適切に把握し数量を決定すること。
また、酪農家の努力が報われるよう畜産経営の安定に関する法律の趣旨に即して生乳の需給の安定を図り、酪農経営の継続、所得の安定、将来的な消費及び生産力の回復のための支援策を早急に講ずること。加えて、需要の減少により高水準で在庫が推移する脱脂粉乳については、需給状況を慎重に検証した上で国家貿易による輸入枠数量を決定するとともに、在庫低減対策等の取組を支援すること。さらに、国産チーズの競争力強化に取り組むこと。
二
肉用子牛生産者補給金制度における保証基準価格等については、中小・家族経営を中心とする繁殖農家の努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、生産コストの上昇を踏まえ、再生産を可能とすることを旨として適切に決定すること。また、子牛価格が低迷する中、経営環境が悪化している肉用子牛生産者の経営改善を支援するとともに、肉用牛の生産基盤の維持・強化を図るため、優良な繁殖雌牛への更新等を支援すること。さらに、物価上昇により需要が減退した和牛肉の需給の改善を図るため、和牛肉の消費拡大を支援すること。
三
高病原性鳥インフルエンザ、豚熱の発生予防及びまん延防止については、農場における飼養衛生管理基準の遵守の徹底を図るとともに、農場の分割管理の導入等の取組を支援すること。また、アフリカ豚熱等の家畜伝染病の侵入防止のため、水際での防疫措置を徹底すること。さらに、これらを着実に進めるため、地域の家畜衛生を支える家畜防疫員及び産業動物獣医師並びに輸入検査を担う家畜防疫官の確保・育成及び処遇の改善を図ること。あわせて、農場の経営再建及び鶏卵の安定供給を図るための支援策を拡充すること。
四 配合飼料価格の高止まりによる畜産・酪農経営への影響を緩和するため、配合飼料価格安定制度を安定的に運営するとともに、生産現場における負担の実態を踏まえ、離農・廃業を回避できるよう、必要に応じて生産者の負担を軽減するための対策を柔軟に措置すること。また、国産濃厚飼料の生産・利用拡大や、耕畜連携及び飼料生産組織の強化、国産粗飼料の広域流通体制の構築等により、国産飼料基盤に立脚した持続的な畜産・酪農への転換を強力に推進し、飼料自給率の向上を図ること。さらに、飼料穀物の備蓄や飼料流通の合理化による飼料の安定供給のための取組を支援すること。
五 畜産・酪農経営を再生産可能なものとするため、生産から消費に至る食料システム全体において畜産物の適正な価格形成が推進される仕組みの構築を図るとともに、消費者の理解醸成に努めること。
六 畜産・酪農経営の省力化を図るため、スマート技術の導入やデータの活用を支援するとともに、飼養管理方式の改善等の取組を支援すること。また、中小・家族経営の酪農家の労働負担軽減のために不可欠な存在である酪農ヘルパーについては、人材の育成や確保のための支援のほか、酪農家が利用しやすくするための負担軽減策を講ずること。
七
中小・家族経営の畜産農家・酪農家を始めとした地域の関係者が連携し、地域一体となって収益性の向上を図る畜産クラスターについて、引き続き、現場の声を踏まえつつ、生産基盤強化や経営継承の推進に資する施設整備等を支援すること。また、大規模化の効果やリスクを十分に分析した上で、飼養規模の在り方について検証し、現場と情報の共有を図るとともに、構成員の既往債務については、返済負担の軽減に向けた金融支援措置等の周知徹底を図ること。
八
畜産物の輸出拡大に向けて、畜産農家・食肉処理施設・食肉流通事業者等で組織するコンソーシアムが取り組む食肉処理施設の再編、コンソーシアムと品目団体との連携による販売力の強化等を支援するとともに、輸出対応型の畜産物処理加工施設の整備を支援すること。
九
SDGsにおいて気候変動を軽減するための対策が求められ、我が国においても二〇五〇年カーボンニュートラルの実現を目指していることを踏まえ、家畜ふん堆肥の利用推進や高品質化、家畜排せつ物処理施設の機能強化等の温室効果ガス排出量の削減に資する取組を支援すること。
十 畜産GAPの普及・推進体制を強化するとともに、家畜伝染病予防法の定める飼養衛生管理基準や新たに策定された飼養管理指針に基づき、アニマルウェルフェアに対応した家畜の飼養管理の普及・推進を図ること。
十一 東日本大震災からの復興支援のため、原発事故に伴う放射性物質の吸収抑制対策及び放射性物質に汚染された稲わら、牧草等の処理を強力に推進すること。また、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。
右決議する。