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昭和二十四年十一月十九日提出
質問第五八号

 主食確保のための濁酒密造防止問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和二十四年十一月十九日

提出者  高田弥市

          衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿




主食確保のための濁酒密造防止問題に関する質問主意書


 国民に対する主食の配給は、年々増加の傾向にあることは、まことに喜びに堪えないところである。しかしながら国民に満足を與え得るまで増配をするということは、まだまだ望み得ない現状であるのである。
 ここに主食確保の上からみて、当然濁酒密造防止の問題を取り上げざるを得ない。今日連合軍の好意による輸入食糧によつて国民生活の安定を得ているとき、濁酒密造のためにつぶされる主食、即ち米の数量はけだしばく大なものであることは周知の事実である。
 今年度における清酒の原料たる米の数量は僅かに四十三万石と聞いているが、濁酒の密造によつてつぶされる米の数量はその六倍乃至七倍、即ち二百五十万石乃至三百万石にのぼるではないかと思う。政府は、いかに声を大にして法律の取締を嚴重にしても、濁酒やかすとりが日に増し激増するのは何故であるか。
 今日農村において米の価格と酒の価格よりみて一升六百四十五円の二級特価酒さえ農業経済上絶対農民は口にすることができないのである。まして一級特価酒九百三十五円においては米約三斗に値するのである。清酒においては米一升より一升四合、濁酒においては米一升より酒二升できると聞いている。政府は、濁酒密造に対して遠慮なく農民を罰金、体刑の嚴罰に処して顧りみないが、この農民の実情をいかに考えて居るか。
 農村には春の田植時、秋の稻刈時には、いかにも少量ながら安価な酒が配給されるのであるが、米を作る農民には、劣等なる化学酒又は合成酒を與えて顧みない現状である。米を作る百姓には合成酒を與え、しからざる者は米でつくつた一級酒を口にするのは大なる矛盾ではないかと思う。
 農民には労働基準法もなく、朝早くから夜おそくまでの過度の労働は、せめて一ぱいの酒が何よりの慰安なのである。また冠婚葬祭その他の行事に農民より、酒を奪うことは絶対にできない。濁酒を奪うならば、清酒を與えなければならない。かくの如く農村の実情を無視して守り得ざる法律の取締をいかに嚴重にしても、農村より濁酒を根絶せしむることは絶対に不可能である。果して大蔵、農林両当局は、この問題に対し主食確保の上よりいかなる政治的な考慮があるのであるか。
 まず農民のために公的な加工の途を開いていただきたいと思う。即ち一定の供出量又は耕作反別に応じ、自家用酒として食糧公団に一定量の米を納付させ、切符の発行によつて清酒を配給する。米と酒の交換により農民へ安価なる酒を提供することである。
 かくして農村より濁酒密造などという風習を追放して、濁酒につぶされるばく大なる米を消費者のために正式な配給ルートにのせることができる。わたくしは主食確保の上よりこの出来秋にこそ政府は緊急にその対策を講ずべきであると思う。
 以上安価なる合成酒にあらざる清酒を合理的に農民に與うべき途を大蔵当局に、濁酒密造によつてつぶされる米をいかに確保すべきかを農林当局に、確たる答弁をのぞむ。

 右質問する。





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