質問本文情報
昭和二十七年四月二十五日提出質問第三二号
温泉保護に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和二十七年四月二十五日
提出者 中曾根康弘
衆議院議長 林 讓治 殿
温泉保護に関する質問主意書
一 温泉の保護に関して大なる障害となつているものは、第一に温泉法と鉱業法との間の矛盾である。鉱業法によつて許可される鉱物資源の採掘を温泉法によつて禁止することはできず、温泉保護区域の設定については常に鉱区の設定との調和を欠き、しばしば訴訟によつて解決を計らねばならぬ現状にたち至つているのである。一例をあげるならば、目下総理府土地調整委員会に提訴されている伊豆伊東温泉と金鉱試掘鉱区設定との問題のごときは、けんけんごうごうたる世論をじやく起し、直接行動にまで発展せんとするかのごとき形勢を示しているのである。
鉱山採掘あるいは試掘のために附近温泉地の温泉が枯渇し、倒壞した例は非常に多く、温泉法と鉱業法との調整は学術的に深い研究を要するもので、地方官庁において解決、処理できない問題であると思われる。
ここにおいて、この問題解決のために、厚生省内に温泉科学者を網らする研究機関を設け、これに当らしめることが温泉行政の急務であると思われる。
二 温泉保護の上に最も重要なることは、温泉の濫掘防止である。
現在、温泉の湧出はもつぱら温泉井によつて行われているが、統制なき温泉井濫掘によつて、湧出量を減じ、温度を下降せしめるまでに至つている。濫掘によつて、一見温泉の繁栄をきたしているかに見えるが、実は温泉源を破壞し、徐々にその荒廃を招きつつある例は熱海温泉を始めとして、枚挙にいとまなきほどである。
これは、温泉は掘れば掘るほど湧出するという誤つた考え方に基いているものであるが、これが防止のために、各都道府県に温泉審議会が設置せられ、努力されているが、同審議会の委員は業者が大多数を占めている関係上、学術的根拠に立つ場合が少ないようである。
ゆえに、厚生省内に温泉課のごときものを設け、大局より見た濫掘防止を徹底的に行わしむることが必要と思われる。
以上二点について、政府の見解及びいかなる施策を用意しているかを質問する。
右質問する。