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昭和二十九年五月一日提出質問第一七号
東富士演習場に土地を接収された農家の救済並びに再建対策に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和二十九年五月一日
衆議院議長 堤 康次※(注) 殿
東富士演習場に土地を接収された農家の救済並びに再建対策に関する質問主意書
一 演習地接収のため農地、山林、牧野等の喪失農家の副次収入の大減少並びに農業経営の基本的な各種要素の喪失等の農家の窮状に対しては、「駐留軍の用に供する土地等の損失補償要綱」等の補償措置によつて、これが解決策とされている現行制度では、農民生活の維持確保のためには真実の保障とは考えられない。すなわち異状農業としての基地農業は、刻々内部的に経営の異状性を暴露し、崩壊の寸前にきている現実は、補償等の消極策よりは再生産の確保拡充によつて積極的に農民生活の安定を図ることに主眼をおくべきではないかと思料せられるが、如何。
二 一の基地農業の救済再建の指導理念に基き、接収農家という国家的犠牲下におかれている窮農に対し、緊急に次の具体的な処置が絶対に必要であると思うが如何。
1 土地の七割(全地域畑作地帯であつて一町一反歩農家が三反歩に転落)余が喪失している農業の現状から推して
イ 地下水源の開発等による水田の造成と畑地のかんがい事業の推進
ロ 土地改良事業の促進
ハ 新規開墾事業の促進
ニ 各種農業土木事業の振興
等によつて土地の生産性をたかめること。
2 土地の高度利用を図ると同時に農家の収益を増大させるため、らく農の導入並びに養鶏、養豚の振興等の有畜営農(迂回生産)の拡充を図ること。
3 農家経済の安定向上に資するため、商品作物の導入とこれが生産拡充を図るため、耕種改善事業を振興せしめること。
三 演習場一帯は、演習による治山治水上の森林地帯等の壊滅によつて誘発される農道、河川の損壊並びに田畑、人家の流失、埋没、浸水等の被害を未然に防止するための対策について、「総理府告示第五十号」に係る工作物の設置及び補修する工事に対する補助措置がとられているが、基地農業の再生産確保並びに拡充の目的に帰依するものであるべきで、これがためには
1 二とともに総合的に基地農業対策として処置すべきものであると思うが如何。
2 特に東富士演習場における関係十箇町村は、数年来前記事態の発生のため、農業の生産力がさらに減退し、窮乏に拍車をかけており、且つ今後これ等被害が加速度的に累積されることが必至であるが、これが具体的対策として
イ 軍事施設、演習場等放水路の設置
ロ 流失道路等の復旧改修措置をして盛土並びに側溝「排水溝」の拡充工事
ハ 橋りようの流失損傷による架橋工事
ニ 河川の欠壊の復旧並びに防止対策としての護岸えん堤工事
等の施設の構築を緊急に実施する必要があると思うが、最善の対策はどうか。
右質問する。