昭和三十四年十二月二十五日提出
質問第三号
政府のロッキードF一〇四C ― Jの購入に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和三十四年十二月二十五日
提出者 今澄 勇
衆議院議長 加※(注)鐐五※(注) 殿
政府のロッキードF一〇四C ― Jの購入に関する質問主意書
政府は、さきに国防会議において、ロッキードF一〇四C―Jを次期戦闘機として採用することに決定したが、これに対しては国会内外に強い反対があり、国民もまた、その決定については深い疑惑をいだいている。しかるに政府は、これら反対を全く無視して、しやにむに、その購入を急ぎつつあるが、かかる政府の態度は、わが国自衛防空の本旨からも、また、納税国民に対する政府の忠実なる責任的立場からも、全く逸脱せる「政治的考慮」によるものであつて、われわれは断じて承服できない。よつてわれわれは、次の諸点につき政府の見解を伺いたい。
通常戦闘機が爆撃機に有効的に対抗するには、スピードにおいて、二割の優勢が要件とされている。すなわち、B58級の爆撃機に対抗して、その攻撃を破さいするには、音速二・四倍の戦闘機でなければならぬ。しかるに、いま政府が購入せんとしつつあるロッキードF一〇四C―Jは音速二倍である。しかもこれは、五年後に生産が完了し、わが自衛隊に配備されることになる。ところが五年後には、さらに音速三倍のB70級が出現する。B58級に対してすら、すでに対抗不可能であるロッキードは、B70級に対しては、全く無能であると思うが、政府の見解はどうか。
一 政府は、ロッキード採用の理由として、日本とアメリカの地理的条件の相違を指摘し、日本に
全く適切なる機種であると主張しているが、しかし、そのアメリカの日本駐留空軍は、ロッキード機を使用せず、コンベアF一〇二を配備している。ロッキードがもし日本の地理的条件に合致しうる戦闘機であるならば、駐日米空軍もまたそれを使用するのが当然と思われるが、その点、全く明らかにされていない。これは政府の主張の矛盾を示すものである。この点に関する政府の考えを問う。
一 政府は、ロッキードF一〇四C―Jは要滑走距離として、最短八千フィートを必要とすると言明しているが、現在、わが国の飛行場で右の条件に合致するものは、千歳、松島、小牧の三飛行場にすぎない。戦略的見地よりして、このような飛行場配置で妥当であるかどうか。さらに、新飛行場の建設ないしは、現在の飛行場の拡張を政府は企図しているのかどうか、政府の見解を問う。
われわれの知るところでは、八千フィートの要滑走距離というのは、純技術的計算によるものであつて、十分なものとはいえない。右の三飛行場のみについても、そのまま使用にたえうるかどうか疑問である。政府の考えいかん。
一 ロッキードF一〇四C―Jの価格については、売り込みの当初、七十九万ドルであつたものが、戦闘機種決定後、赤城防衛庁長官の言明によれば百十五万ドルにはね上がつている。
この値上がりは、機体のいかなる部分の値上がりに由来するものであるか。また、生産工程のいかなる評価の相違に由来するものであるか。さらに、純生産費に関連のないプロフィット部分に由来するものであるか。価格の変動に関して、政府は詳細なる報告を行い、国民の前にこれを明らかにすべきである。われわれは、価格の値上がり理由について、政府の見解を伺いたい。
一 ロッキードF一〇四C―J生産にあたつて、その国産化部分について、政府は全くほおかぶりしている。政府の一方的な国産化部分の決定がなされた暁においては、その質と量とがわが国防衛産業に及ぼす影響は、まことに多大である。
われわれは、わが国経済が平和な成長をとげることを目途としているが、政府の行き当りばつたりのやり方では、軍需産業の悪拡大を軸にして、国民経済のかく乱と国民生活への圧迫を招来するおそれが大である。
よつて政府は、ロッキード生産の国産化部分の「質」と「量」とにわたる見解を明らかにすると同時に、政府の考える防衛産業対策を明らかにされたい。
右質問する。