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昭和四十一年四月一日提出
質問第八号

 大豆の輸入関税等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十一年四月一日

提出者  島口重次郎

          衆議院議長 山口喜久一郎 殿




大豆の輸入関税等に関する質問主意書


一 ガツト交渉の内容が秘密にされている点について
  ガツト関税交渉の成り行きいかんは製油産業に重大な影響をおよぼすものであるが、政府は、この交渉にのぞむにあたつて提出している日本側の案について、国内産業にはなんらの相談もなく、全く秘密裏にことが進められている。その内容をすみやかに明らかにすべきだと思うが、いかなる理由によつて秘密にしているのか。
二 製油原料関税の大豆偏重について
  政府は、目下、製油関係品目のうち、大豆については輸入税率を免税にするという方向でガツト交渉を進めている模様であるが、他の油脂原料関係についてはなおざりにされているきらいがある。
  大豆の輸入関税率は、現在、トン当たり一〇二ドル五〇セント以下の場合は一三%、それ以上の値段の場合は従量税としてキロ当たり四円八〇銭が課せられることになつている。通関大豆の大部分は一〇二ドル五〇セント以上の値段であるから、適用される税率も従価の一三%ではなくて、従量のキロ四円八〇銭の方がはるかに多い。ことに昭和三十七年以降は、海外の大豆価格の高騰により、たえず一三%を大幅に下回る率になつている。すなわち、大豆関税率一三%というのは、今日ではもはや有名無実となつていて、実際には一一%以下にとどまつているのである。しかも、この大豆関税には、脱脂大豆の保税という特別措置が講じられているので、現実に課せられている税額はもつと低いものになつている。通関金額と税額から簡単に試算すると、昭和三十七年度九%、同三十八年度九・四%、同三十九年度八・六%、同四十年度上期(四〜九月)七・九%、下期はさらに低下する見込みである。
  一三%という名目関税に対し、実質はこの半分強の税率にすぎないのである。にもかかわらず、政府は、この七%余りの大豆関税をいじることによつて、食用油の自由化を進めようとしている。そのかげにかくされて、なたねの関税は依然キロ当たり六円一〇銭に固定されたまま、その是正対策は全くなおざりにされている。関税対策の大豆偏重を改める意思なきや否やをうかがいたい。
三 無視されているなたね税率引下げの要望
  なたねの輸入関税は、大豆関税よりキロ当たり一円三〇銭高の六円一〇銭にすえおかれており、中小製油業者から、このなたね関税の引下げ要望があつても、農林省当局としては、「まず大豆関税を無税にすることが先決で、なたねは自由化してからでなければ適切な輸入関税率がどのくらいかわからない」といつた暴言を吐く始末だと聞いている。
  なたね関税の改定は、なたねの輸入を自由化してからでは遅きに失するきらいがある。関税改定を怠つて自由化した場合には、多くの中小業者は、その高税のために犠牲になるおそれがあるからである。
  なたねは、中小製油業者にとつて唯一の最も重要な油脂原料である。また、なたねは大豆の二倍も油分をもつ重要な油脂原料である。このような、なたねを高い関税のまますえおくということは、とりもなおさず政府の中小企業対策の重大な欠如の露呈であるといわねばならない。大豆はすでに前記のように実質的に低い税率であるのに、さらにこれを引き下げ、あるいは無税にしようとしているのに対し、なたねを高関税のままにしておくということは、根本的に大きな誤りをおかしているものだと考えられる。
  なたねに高い関税がかけられた一つの動機は、国産なたねの保護ということであつた。しかし、現在は国産なたねについては「大豆なたね交付金暫定措置法」によつて保護されており、輸入なたねの関税とはきりはなして農民対策が実施されている。今日では、なたねの関税と国産なたねの保護とは全然別問題である。
四 原料関税と製品関税のアンバランスについて
  現在の油糧品目の関税一覧表には、多くの矛盾点と不備点がのこされている。この矛盾と不備を是正することなしに大豆関税だけを修正し、ガツト交渉をまとめ、非自由化品目の窓口を開放したりすることは、きわめて危険である。大豆関税を修正するときには、当然、他の原料、油、油かす全般の関税率を改定しなければならないと考える。
  矛盾の一つを指摘する。大豆関税は名目一三%またはキロ当たり四円八〇銭、実質七%そこそこであるのに対し、大豆油はキロ当たり二八円、大豆油かすは五%である。
  一方、なたね関税は、キロ当たり六円一〇銭で大豆関税より高いが、なたね油はキロ当たり二四円で大豆油より安く、なたね油かすはその他の油かす同様無税になつている。すなわち、原料関税ではなたねの方が大豆より高く、製品関税では逆に安くなつているのである。
  大豆となたねの関税率の不均衡に加えて、なたね自体の原料と製品の関税アンバランスはこの一事を見ても明らかであろう。ともに自由化した場合に受ける国内産業の打撃の度合いは、大手企業より中小業者の方がはるかにきびしいということがわかる。大企業温存政策の偏重と、中小業者保護対策の欠如のあらわれである。
  原料・製品のこのような差別扱いがなくとも国内では大企業に中小業者は日一日と圧迫を受け転廃業のやむなきにいたつている。かてて加えて、関税上のこうした差別待遇により中小業者はますます窮地に立たされているのである。
五 国民生活の向上のために
  油は、味噌、醤油などとならんで生活必需物資である。現在ではもはや油をぜいたく品だなどと考える人は一人もいないはずである。欧米諸国にくらべて、日本人の油の摂取はまだまだ低すぎることはいまさらいうまでもない。わが国では、もつと油の摂取をふやすような施策が望まれる。ところが、現実に政府のとつている政策はむしろそれらとは逆の印象をうけるものが多い。
  油脂原料に対する高い関税は、ひいては油の摂取増進を妨げるものである。さきにみてきたような輸入関税率に対する多くの矛盾は、他の基幹産業よりも製油産業を軽視していることを意味するものである。農林省当局としても、もつと真剣にとり組むべきであると考えられる。
  国鉄の貨物運賃改正の取扱いにもその一例がある。同じ生活必需品である味噌・醤油は特別等級の取扱いをうけている。また同じ油脂でもマーガリン・シヨートニングも特別運賃の恩恵を受けている。にもかかわらず、食用油があいかわらず高運賃に悩まされているのは、なぜであろうか。日本国民の体位向上に不可欠の食用油をどういう理由によつてこのような差別待遇にするのであろうか。運賃を安くし、少しでも安価な良質食用油が全国の家庭にとどけられることは非常に意義のあることと考えられる。当局の明快な回答を希望する。

 右質問する。





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