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昭和四十三年三月二十一日提出
質問第七号

 国際金融危機に備える政府の施策に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十三年三月二十一日

提出者  竹本孫一

          衆議院議長 石井光次郎 殿




国際金融危機に備える政府の施策に関する質問主意書


 世界平和秩序の根幹として、国際決済通貨と国際金融の安定は、不可欠な条件であるが、昨年十一月のポンド切下げに始まる国際金融不安は、ついに本月十八日における七箇国金プールの解体と金価格の二本建て容認の事態にまで拡大し、国際決済通貨と金価格の動揺、世界経済のデフレ化のおそれなど、経済危機感が世界的に高まつている。七箇国金プール会議で決定した方針によつて、ドル・ポンドは一時的に小康を保つであろうが、米英の国際収支の不安定解決の見通しが基本的に明確でない現時点において、国際金融はまだ安定を確保したとはいいがたい。このような重大時期にのぞんで、工業生産力は高度化しても金準備の過少なわが国は、国民経済防衛上きわめて不利な立場にあり、国民の不安はそこに集中している。
 ついては、国民の不安と疑惑にこたえ、この際、わが国経済の安定を確保する方途を明らかにするため、政府は次の諸点について、確こたる見解を示されたい。

一 政府の政治責任について
  わが党は、立党いらい、しばしば自民党政府に対して、わが国の外貨保有高ならびにその内訳としての金準備が、国民所得規模や国際収支規模の拡大に比例して堅実に蓄積されず、特に金準備の過少が必らず近い将来に重大なる欠陥になることを指摘しつづけてきた。
  いまや、パリに金自由市場が出現し、金価格がドルとパリ中心の自由価格との二本建てとなつた時点において、外貨保有のうち十五億ドルを海外引揚げのおそれの強いユーロダラーに依存し、また金準備わずか三億ドル程度のわが国の手持ち外貨事情をもつてしては、わが国の国際収支危機の克服と円価値の維持は困難をきわめる。このような事態を招来した責任は、あげて歴代の自民党政府のあやまれる外貨蓄積方式にあることは明らかである。政府はこの責任を国民に対していかに説明するか承りたい。

二 政府の国際金融不安の現状認識について
  政府は、わが国の保有外貨のうち、金準備を極力低く押えて、ドル・ポンド為替の有利な運用をはかつたことこそ、高度成長と国際収支規模の拡大を実現しえた理由であると自画自讃しているが、この政府の意見は、ドル・ポンド価値に対する過度の信用と、貿易と資本の自由化に対する希望的観測の行きすぎに基づくものといわざるをえない。今後も大勢として、自由市場における金価格の上昇はつづき、これと相対的にドル・ポンド自由価額が低落することは避けられない。しかも米国はドル防衛に対する国際協力を名として友好国に輸入課徴金を適用するがごとき貿易自由化に逆行する利己主義にはしるなど金融不安は依然として残り、不安が常にドル・ポンド及び各国の通貨不信に始まる金融恐慌に発展するおそれなしとしない。政府のドル過信、自由化に対する甘い願望は、いたずらに政府の対米追随と自主経済確立に関する無策を表明するものにすぎない。いまや、このままの姿でドルを今秋の大統領選挙後まで維持し続けることはほとんど不可能にちかい。この際、秩序ある国際協力のなかで、米国の硬直化したドル防衛策の抜本的是正を、米国政府に対して強く要請すべきときであると思うが、政府の見解を承りたい。

三 国際金融不安の打開策について
  金価格がすでにドルと自由市場の二本建てとなつた現在、一オンス三十五ドルを堅持せんとする米国のドル防衛策が、国外への金流出の全面的制限措置をとること、ならびに、ドル防衛協力国も同様の措置をとるであろうことは必至である。従つて、世界経済の流動性が停滞に転じ、デフレ化することは不可避である。米国はいまこそ、ドル防衛の基本策として、ベトナム和平の早期実現、財政金融の引き締めによる国内インフレの抑制、輸入課徴金など他国への犠牲転嫁の中止を断行し、国際金融不安の根源を排除すべきときである。
  政府は、単に輸入課徴金問題についての対米特使派遣を考慮するだけではなく、早急に自由主義諸国家の首脳会議を招集し、国際金融不安除去の世界最高会談を開催するよう、米国政府に要請すべきであると思うが、政府の所信を承りたい。

四 当面の国内緊急対策について
  すでに国内の外国為替取引は渋滞を生じ、貿易商社や輸出関連製造業者等の不安動揺が高まりつつある。一方、円売りと国内資産株への投機など、円通貨に対する不安から生ずる思惑も拡大している。
  政府は、国際金融不安によつて生じているこれら国内の不安動揺を抑制するため、当面直ちに次の緊急措置を講ずる必要があると思うが、政府の見解を承りたい。
 1 輸出停滞によつて生ずる業者の損失、または業者の金ぐり悪化に対する金融機関の緊急融資は、金融の窓口規制を適用せず、優先的に融資すること。
 2 輸出停滞によつて生ずる倒産または関連倒産に対しては、すべて輸出保険または中小企業信用保険の緊急適用によつてこれを防止すること。
 3 米国の輸入課徴金実施のいかんにかかわらず、わが国は自主的に輸出所得控除制度を設けるよう本国会に税制案を提出し、輸出減退の防止と輸出の拡大をはかること。

五 昭和四十三年度財政金融政策の弾力的運用について
  国際金融不安の激化は、あらゆる予測をこえて急速に拡大している現状にかんがみ、政府は、目下国会で審議中の昭和四十三年度予算の執行ならびにこれに対応する今後の金融については、常に状勢の変化に応じて弾力的かつ機動的に運用すべきであると思うがどうか。
 1 政府は財政金融の引き締め政策を堅持すること。ただし、輸出関係融資は金融規制を適用しないこと。
 2 明年度歳出予算の支出一部繰延べと行政費用の節約、国債発行額の減額等を含む補正予算を編成すること、および本国会の会期終了後に補正予算編成を必要とする場合は、直ちに臨時国会を召集すること。

六 国際収支悪化に伴うI・M・F(国際通貨基金)資金の借入れについて
  現状においては、輸出の減退と、資本収支の大幅悪化、すなわちユーロダラーの引揚げ等によつて、国際収支の赤字が大幅に増加するおそれが強くなつてきた。米国が今後いつそうドル防衛を強化し、かつドル不安も短期間に解消しないことは明らかであるので、赤字増大傾向に対応して、対米スワップ契約によつて保有外貨の補強を図ることは、心理的効果以外に多くの成果を期待しえない。よつて、今後のユーロダラーの引揚げによるわが国の保有外貨量減少を補てんするためには、I・M・Fを強化するとともに、これよりの借入れを実施すべきであると思うが、政府の所信を承りたい。

七 国際収支赤字の見通しと円価値維持についての政府の決意について
  昭和四十三年度のわが国経済は、政府の予測をこえた国際収支の赤字を生ずることはすでに避けられないが、この赤字増加幅を最小限にとどめ、ドル不安下においてもなお円価値の維持をはかるため、いまこそ政府は、勇気と決断を持つて国民に真実を示し、その協力をもとめるべきである。
  この見地にたつて、政府が次の施策を実施する決意があるかどうかを明らかにされたい。
 1 明年度の国際収支赤字増加を最小限度どの程度として予測するか、その予測の根拠とともに国民に明らかにすること。
 2 ドル不安下においての円価値維持のため、政府は財政金融の引き締めと輸出拡大についての思いきつた施策を時期を失せず講ずべきであるが、政府はその構想をすみやかに国民に明らかにすること。
 3 現時点における世界金融不安の打開のためには、前述のごとくベトナム戦争の早期解決と、米国内のインフレ抑制に併行して、米国およびわが国を含むドル防衛協力国が計画的に、経済秩序の混乱を排除しつつ不自然なる金の二重価格の早期解決と各国平価の総合的調整を円滑に推進するよう、各国巨頭会談を開催する必要がある。政府はこの認識にたつて、米国政府に各国巨頭会談の招集を要請すること。

 右質問する。





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