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昭和四十五年三月十九日提出
質問第二号

 宗教団体の政治的中立性の確保等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十五年三月十九日

提出者  春日一幸

          衆議院議長 (注)田 中 殿




宗教団体の政治的中立性の確保等に関する質問主意書


 憲法の保障する信教の自由は、侵すことのできない基本的人権であり、あくまで擁護されなければならないが、宗教団体の中には、加入、脱退、金品授受、治療等につき、欺罔、強制、圧迫、迷信等により、基本的人権を侵犯し、公共の福祉に反すると思われるものが見受けられ、政府のこれに対する適切な措置が要望されてきたところである。
 しかるに、最近においては、出版、選挙等につき、巨額の資金を擁し、政界進出を企図して、信教の自由を乱用し、政教分離の原則に違反すると思われるような宗教団体の行動が重大な社会問題となつており、このままに推移するときは、わが国民主主義体制は根底から崩壊するおそれなしとしない。
 まことに深憂に堪えないものがある。
 よつて、次の諸点につき、政府の見解を承りたい。

一 憲法第二十条は、信教の自由を保障すると同時に、政教分離の原則を宣言している。
  さらに同第八十九条は、宗教上の組織または団体の維持等のための公の財産の支出を禁止している。
  これらの規定は、国家教会、教会国家ないしは国家神道のごときものを否定し、要するに、信教の自由を守るためには、政治と宗教が密接に結合することを排除し、制度的に宗教団体の政治的中立性を確保しなければならないとの意思を明確に宣示したものである。
  人類の過去の歴史は、信教の自由、表現の自由等の基本的人権が、時には封建的な社会組織に、時には専制的絶対王政に、時には専断的な宗教の支配によつて蹂躙されてきたことに対する自由獲得のための流血闘争の記録であつた。
  この歴史に顧みるとき、憲法の保障する基本的人権は、現在および将来の国民があらゆる試練に堪え、これを侵すことのできない権利として、不断の努力を続けるのでなければ、これを保持することができないことは明らかである。
  就中、宗教団体の政治的中立性は、基本的人権を尊重する民主主義社会に欠くべからざる前提であり、したがつて、これがためには、不断の努力により、国家およびその機関が直接たると間接たるとをとわず、宗教的活動をすることを排除すると同様に、宗教団体または宗教団体が事実上支配する団体が、その教義に基づく政治支配を企図するがごとき政治的活動をすることをも厳に排除しなければならない筋合いのものである。憲法の政教分離の原則の真義もまさにこの点にあると考えるがどうか。
二 宗教法人法によれば、宗教法人の主たる目的は、宗教の教義の宣布、儀式行事の執行および信者の教化育成であり(第二条)、その従たる目的は、公益事業を行なうことであり(第六条第一項)、なお、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行なうことができると定めている(第六条第二項)。
  その他宗教法人法は、宗教法人の設立、規則の変更、事務の管理、合併、解散、登記等について規定しているが、宗教上の組織、行為には、信教の自由の原則からなんら関与しない建前を採ると同時に、政教分離の原則に基づき、宗教法人に対する国家の干渉を排除し、国からなんらの利益ないし保護を与えないこととして、宗教団体の政治的中立性の制度的保障がなされている。
  ところで、宗教法人が政治上の主義、施策を推進し、支持し、反対し、または特定の政党や公職の候補者を推薦し、支持し、反対する等、政治的活動をすることについては、宗教法人法上なんら規制するところがない。
  しかしながら、憲法の信教の自由、政教分離の原則ならびに宗教法人の本質および目的からすれば、かかる政治的活動は、宗教法人法から逸脱するおそれがあるものであり、ゆえに無条件にこれを認めるべきではない。
  立法例に徴するに、公務員に対しては、職務執行の公正と政治的中立性を担保するため、政務官的な職を除くほか、一般に政治的行為を制限、禁止しており(国家公務員法第百二条、地方公務員法第三十六条等)、また、国公立学校に対しては、教育の中立性を確保するため、特定の政党を支持しまたは反対するための政治教育その他政治的活動を行なうことを禁止している(教育基本法第八条第二項)。
  宗教法人に対しても、宗教団体の政治的中立性にかんがみ、たとえばある宗教法人がその宗教教義による政治支配を企図して政治的活動を行ない、または行なわんとする場合は、これを禁止できるよう、速かに立法措置を講ずべきが至当であると考えるがどうか。
三 法人税法においては、宗教法人を含め、一般に公益法人等の非収益事業所得(基金等財産運用から生ずる所得を含む。)に対して、法人税を課税しないこととしている。
  これは、公益法人等の非収益事業所得に対して法人税を課税することは、祭祀、宗教、慈善、学術、技芸等公益事業の遂行を目的とする公益法人等の機能および運営を阻害することとなる等の理由から、これを避くべきであるという立法政策上の考慮によるものと考えられる。
  しからば、公益法人等が非収益事業所得の全部または一部をその設立目的たる公益事業の遂行のために使用しないで、目的外の使途、たとえば政治資金、政治献金等に使用したような場合において、これをしも非課税とすることは、極めて合理性と妥当性を欠くものといわざるをえない。
  したがつて、公益法人等の非収益事業所得のうち、目的外の使途に使用されたものについては、これを法人税の課税対象とするよう、速かに立法措置を講ずべきものと考えるがどうか。
四 表現の自由は、思想および良心の自由、信教の自由等と並んで、基本的人権中の基本である。これは、国家的権力によつて侵犯されてはならないだけでなく、私人によつても侵犯されることがあつてはならない。
  宗教団体は、信教の自由に基づいて組織されたものであるが、宗教団体を客観的に批判することは、表現の自由、思想および良心の自由として当然に是認されるところである。
  宗教団体が自己を批判する出版物に対して、欺罔、強制、圧迫等、種々手段を講じて、事前検閲を行なつたり、出版社、印刷所、出版取次店、小売書店、広告代理店、著者等に対し出版および頒布の妨害を行なうがごときは、場合によつては関係法令に違反する疑あるのみならず、このことは、知らせる権利と知る権利を内容とする表現の自由に関する憲法上の基本的人権を侵犯する行為というべきである。
  この種の不正、不法行為に対しては、その行為者が何人たりといわず、これを不問に附するようなことありとすれば、基本的人権に関する憲法の保障規定は、ついに空洞化されるおそれなしとしない。
  政府は、今国会予算委員会において提示された創価学会をめぐるこの種の事案に対し、関係法令を厳格に運用して処置するとともに、なお法の不備を認める場合には、速かに必要な立法措置を講ずべきであると考えるがどうか。
五 なお、今国会予算委員会における(注)本三郎君の発言によれば、創価学会の布教その他の宗教活動は不当に人心を強制し、或は基本的人権を侵犯するおそれある事案が簇生しているとされている。
  政府は、まずこれらの事実関係を詳かにするとともに、この際、創価学会はもちろん、その他の宗教団体に対し、不正、不法な宗教活動を行なわしめないよう、人権擁護の立場から昭和三十一年六月三日衆議院法務委員会における「不正なる宗教活動に対する決議」の通り、その決議内容の各項目にわたり直ちに厳格、適正なる措置を講ずべきであると考えるがどうか。

 右質問する。





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