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昭和四十八年六月二十一日提出
質問第九号

 インフレ・物価抑制緊急対策に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十八年六月二十一日

提出者  竹入義勝

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




インフレ・物価抑制緊急対策に関する質問主意書


 すでに、五月において卸売物価指数は前年同期比上昇率一二%と、戦後最高(戦争直後の悪性インフレ期を除く。)の上昇率となり、消費者物価は東京都区部で前年比一一・六%となつて、五月末の公定歩合再引上げ後も景気過熱、物価騰勢は沈静化する兆候をみせていない。しかも、企業の多くは、生産設備の不足、在庫の不足を訴え、四十八年度の設備投資計画は大幅に増額修正され、企業の手元流動性は依然として高い水準にある。
 こうした現状は、政府が続けてきた大企業優先の高度経済成長政策にその根本原因がある。列島改造論はインフレ・マインドをあおり、大企業の土地買占めは、株式、商品から生活必需物資とどん欲な利潤追求に狂奔したが、その間、政府は何ら有効な手を打たなかつた。今年の一月から、政府は預金準備率の引上げや窓口規制を復活し、また、世論のきびしい批判を受け、ようやく土地関連融資規制や大手商社向け融資の抑制に動き出したが、いずれも後手に回つて実効が上つていない。
 一方、昨年来騰勢をみせてきた卸売物価については、鉄鋼などの不況カルテルを引き延ばし、長期にわたる消費者物価抑制の要求についても何らの対策を講じてこなかつた。さらに本年度予算では、インフレの進行を許し、庶民生活をインフレから守るどころか、国鉄運賃、健保料金引上げをするなかで、産業基盤造り、防衛関連予算の比重を増大している。
 こうしたいままでの政府の姿勢を変えず、日銀の金融引締め政策だけで、ますます危機を深めるインフレを抑制し、物価をおさえることはできないと考える。
 この現状に立つて庶民の生活を守るため、政府はつぎの対策を直ちに実行すべきであると思うが、これに対する政府の見解並びに、政府が実施しようとする対策を明らかに示されたい。

一 財政金融政策について
 1 政府は金融引締めのみで景気過熱をおさえようとしているが、その効果は限定される。公定歩合、預金準備率、貸出し規制を機動的に発動することはもちろんであるが、とくに投機的資金(土地・商品等)をさらに厳重に規制し、過熱した企業マインドのなかで過度な設備投資をきびしくチェックし抑制すること。
 2 貸出し規制のしわよせを強く受けるのは中小企業である。大企業に対する規制とは別に中小企業や農業の労働生産性の上昇と生産力の拡大、業種転換等のための金融措置を図ること。
 3 開発銀行等の政策金融について景気刺激と直結する融資を直ちにやめること。
 4 消費者金融のうち自動車ローンなどについては安易な貸出しを抑制する。ただし、勤労者の住宅ローンは、住宅政策の上から一定収入以下の者には無利子ローンを創設すること(政府と、企業の社会負担による利子補給制度の創設を図る。)。
 5 銀行の預金金利、郵便貯金の金利を大幅に引き上げること。
 6 四十八年度予算のうち、列島改造関連、産業基盤造成の公共事業費および防衛関連費を削減し減額修正をすること。
 7 庶民の生活をインフレから守り、庶民に浸透するインフレ・マインドを解消するためにも年金、その他、社会保障制度を充実すること。
 8 法人収益は予想以上に好調である。勤労者は、所得水準が上がつても、所得税の累進と物価高で生活はますます苦しくなつていく。勤労所得百五十万円(標準四人世帯)までの非課税と大企業の法人税率を四〇%にすることを本年度において実施し(来年度からは大企業に対する累進課税方式をとる)、また、大企業、資産所得者優遇の租税特別措置を廃止すること。なお中小企業の法人税は二三%(協同組合並み)に引き下げること。
 9 国鉄、健保料金の値上げが物価上昇につながることは必至である。したがつていつさいの公共料金値上げを止め財政負担を引き上げること。国鉄については、大企業(大口)優遇や軍需貨物運賃等を改め料金体系を適正化すること(これに関連して、私鉄、ガス、電力等の公共料金を値上げしない。)。

二 管理価格の規制の法的措置と調査体制の強化について
 1 寡占企業の製品価格の上昇が直接に国民の消費生活に及ぼし、また、生産財として商品価格に大きく影響していることから、わが党がかねてから社会、民社両党と共同して提案してきた、寡占企業の「寡占価格規制法案」の内容に基づき価格規制の法制化を早急に実現すること。
 2 公正取引委員会の調査体制と権限を強化するとともに、現行の独禁法を改め、価格に対する証拠主義を状況によつて価格協定が認められるものとして、原価構成の報告提出、立入り検査、価格引下げ勧告・命令等ができるようにすること。
 3 国会の物価特別委員会に、現在より充実した調査機能を有する附属機関を設置し、物価安定に関する提言を強力に行なえるようにすること。

三 大企業の投機規制と独占的な輸入品対策について
 1 土地投機に対する規制の強化のほか、生活関連物資に対する投機については四野党共同提出の「買占め、売惜しみ規制法案」による規制強化、行政権限の強化、罰則強化をすること。
 2 投機行為による価格高騰によつて得た異常な利益に対しては分離して累進課税する税制度をつくること。
 3 生活関連物資の輸入については価格、数量等を主務省に届出する義務を負わせるようにすること。
 4 総代理店制等による独占的輸入品については、価格調査を行ない、流通段階で不当な利益を得たものに対しては、価格の引下げ勧告をし、また公表できるようにすること。
   製品輸入の増大に従い独占的輸入を排し、併行輸入を促進して競争体制を整備すること。円の変動相場制以降、輸入され、値下げされた品目はどれだけあるか示されたい。

四 主要農産物について―自給体制の整備と食管制の維持について
 1 農産物の生産復帰は容易ではなく、また輸入にゆだねた場合は大手商社の投機商品となる。世界の食糧事情からも自給体制の整備、確立が必要である。したがつて安易な完全自由化はしないこと。
 2 食管制度が形骸化され、減反政策と相まつて消費者の米価が上昇の一途をたどつている。生産者米価の値上げは当然であり、食管制維持のもとに消費者米価は上げないこと。麦の政府売渡し価格は上げないこと。
 3 主要農産物や輸入依存度の高いものは、海外需給動向による不測の事態に対応して、安定した供給を確保するため、財政負担による備蓄体制を整備すること。

五 生鮮食料品の価格抑制対策について
 1 野菜の供給体制を確立するため指定産地制度を拡充し、「野菜出荷安定法」による生産者に対する価格保証水準を引き上げるとともに、「指定産地」「指定野菜」「対象消費市場」を整備、拡充し、予約数量を増大、調整して需要に対してゆとりのある供給量と供給体制を確立して、生産者の価格水準の安定、消費者価格の安定をすること。
 2 卸売市場、分市場の増設と配置を適正に整備し、他方、公設市場を緊急増設し、産地直送販売をすること。また、消費者団体と産地直結を図るため、運賃、融資等の助成を行なうとともに、公共の施設を利用させること。
 3 大都市の卸売市場の需給調整機能をもたせるため、周辺地域に公的な大型冷蔵庫を整備して公的管理をすること。
 4 生鮮魚貝類の大手水産会社、商社等による、冷蔵会社、荷受会社、仲卸売人の系列支配を調査し、支配体制を排除すること。
 5 市場の「セリ」に公的要素を導入するように図ること。
 6 零細小売商の経営近代化のための行政措置と助成を改善充実すること。
 7 食肉の輸入を拡大し、関税の引下げをするとともに、商社による食肉メーカーの系列支配を排除する。また、輸入食肉の流通管理を強化し、不当表示に対する行政指導を強化すること。
 8 畜産振興事業団の管理を充実し、価格調整機能と供給機能を強化すること。

六 地価抑制対策等について
  地価の暴騰が諸悪の根源になつていることはいうまでもない。政府の土地対策の放任による害悪はどん欲な利潤追及をほしいままにし、反社会的な投機を容認して、国民の資産格差を拡大させ、社会的荒廃を招きながらインフレを進行させてきた。
 1 国民の生活の根拠となる一定規模(三百三十平方メートルを基準とする)以下の宅地(住宅用地で別荘・セカンドハウスを除く。)と一定規模(百平方メートルを基準とする)以下の住宅(住宅部分)は固定資産税を非課税とし、固定資産税を適正化する。しかし、大企業の保有する土地については資産に応じた累進課税方式をとり強化すること(未利用地には未利用地税を課すようにする。)。
   生活の根拠となる一定規模(前項と同じ。)の借地、借家の地代、家賃が値上げされないよう固定資産税を四十七年度と同額にする措置をとること。
 2 大企業の買占めた土地に対して、国民福祉優先の立場から公共住宅、公共施設設備用地取得のための国、公共団体の先買権、買取請求権、収用権を定め国または公共団体で買い取り、公共住宅建設や低廉な宅地として供給にふりむけ公共住宅(賃貸住宅中心)建設を推進すること。
 3 大企業の土地譲渡所得には、これを完全に分離して、譲渡益の八〇%以上の課税をするように改めること。
 4 国、公有地の払下げ(都市とその周辺は全面的に)を即時停止し、公的土地の拡大とあわせて公共用地として活用する。また、軍事基地返還を推進し、公共用地として活用すること。
 5 都市計画区域内の土地売買と開発を許可制とし、企業規模に応じて面積規制をして投機的な買占めを排除すること。
 6 土地利用計画には、住民意思が反映できるよう、民主的な構成による土地管理委員会を設け、土地管理の一元化を図ること。
   地方公共団体の土地利用計画については、土地管理委員会と地方議会を通じ知事と政令都市の長の決定権限を認め、中央集権的な規制と介入をしないこと。

 右質問する。





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